こいつは面白い、と思わせる力



 先週火曜日のOB講演会、私は宮城大学の担当ということで、前評判の高かったA君の話を聞いた。宮城大学在学のOBとは言っても、彼は現在大学を休学し、ドイツに本社のある某会社の仙台事務所で正社員として働いている、という変わり種である。既に一度自分でも会社を作り、それなりの経営に成功していたが、一緒に会社を立ち上げた友人とウマが合わず、その友人に経営権の全てを譲る形でやめてしまったと言う。大学を卒業する気はあるので、今の会社で働き続けるつもりはないそうだ。就職難のこのご時世、「もったいない」という声も聞こえてきそうだが、彼なんか、就職の心配は全くしていない。むしろ、採用してくれる会社なんかいくらでもある、無ければ自分で作ればいいだけの話、と考えている様子であった。それはそうだろう、私が社長だったとしても、これは欲しいと思わせるだけのものを持っていた。何と言っても甘えた所が全くなく、マニュアルが無くても自分で考えて何とかする、そんな人物だからである。特に印象に残った言葉を少々紹介しておく。

1:質問する力は生きる力だ

2:求人を見てバイトに行ったことはない。自分で働いてみたい会社に直接出向き、バイトさせて欲しいと交渉して使ってもらっていた。

3:僕は時給1000円以下のバイトはしないことにしている。

1はわかりやすい。質問できるというのは自分で考えるということだから。問題は2、3である。自分で使って欲しいと頼みつつ、但し時給1000円以下ではダメですよ、と言っているわけだから、実に厚かましい話である。しかし、他の人が時給800円だとして、僕は1000円分以上の仕事をしますよ、と自信を持って言っているということである。会社の経営者がこんな学生に出会ったら、確かに、これは面白い、他の人プラス200円に値するどんな仕事をするんだろう、ダメだったら首にすればいいだけの話だからやらせてみようか、となるに違いない。そして本人も、そういう条件を持ち出すことによって、いい加減な仕事も、言い訳もできない状態に自分を追い込んでいるのである。やるなあ。

 というわけで、宮城大学にはほとんど触れず、経済とか経営とかを、自分の経験と共に話していったA君であったが、私としてはとても勉強になった。あれだけのOBが来たのだから当たりバズレは相当あったと思うが、大学とか学部とかの説明という事務的なことではなく、私達に生きる上でのインスピレーションを与えてくれる話は、今後もぜひ聞いてみたいものである。

 

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 事前に進路部から、A君はプレゼンテーション能力の高い人だと聞かされていた。が、人に話をする能力というのは、人に話したいこと、話せることがあって始めて発揮されることがよく分かった。大切なのは、人に伝えるべきことを持つこと。しかし、これは誰でも分かっていることでは伝える価値がないので、自分なりの努力によって、人の知らない何かを身につけなければならない。もうひとつは、自分が分かっていることの中で、相手も分かっていることが何で、分かっていないことは何かという判断だ。自分の分かっていることを、相手も分かっていると誤解すると、人にものは語れない。これは、諸君の考査の答案を見ていても思うことだけど・・・。