ファッションデザイナーへの道



 今月、珍しく(?)、教員としての私にとても喜ばしいニュースが二つあった。どちらも前任校で受け持った生徒に関わることである。ひとつめは、S君がドーハで開かれたアジア大会ボート競技男子軽量級ダブルスカルで優勝したというニュース。もうひとつは、K君が全国ファッションデザインコンテストで特別賞を受賞したというニュースである。特別賞というのは、優勝ではないが、応募4530作品中上位の数点に選ばれた、ということらしい。

 K君は、私が3年生の時の担任だったこともあり、生徒会長だったということもあって、とてもよく印象に残っている生徒である。彼が、推薦入試で杉野服飾大学という当時私が全く知らなかった大学へ行くと言い出した時には少し驚いた。彼は決して成績が悪くなかったし(諸君の多くが入りたいと思う大学に入れる成績、と言っておこう)、ファッションデザイナーになるというのはリスクが非常に大きい夢だからだ。だが、私は当時から、人は自分の納得できる人生を歩むしかないと思っていたし、失敗が許されるのが若者だとも思っていたので、決して止めはしなかった。しかし、それがいかに危険な賭けか、くらいの説明はしたように記憶する。

 今回の入賞によって、彼の前途が洋々と広がったわけではない。しかし、自分の目標に向けて着実に努力した結果として、少し近づいたのは確かだろう。今後更にステップアップして、偏差値のランキング表の少しでも上を目指してあくせくするというだけの人達を見返して欲しいものだ、と思う。そういう硬直した価値観の中で自分を見失わなかったのが、K君の偉い所なのだから・・・。