ある期待すべき出来事



 平々凡々な週末を自宅で過ごした。うち半分は、ぎっくり腰に近い腰痛のために、大掃除も出来ず、走りにも行けずに大人しくしていた。いい金華サバが手に入ったので、しめ鯖を作り、押し寿司にしたのとルーティンとなったパン焼きと、年賀状の印刷だけが大きな労働だった。

土曜日、ちょっと買い物に出たところ、某スーパーの前で、水産高校のM君から元気に声を掛けられた。非常に驚いた。M君と言えば、授業中は無気力生徒の代表格で、そもそも欠席も多いし、授業に出ていても寝ていることは多いし、私が彼の隣に行って頭をコツコツ叩きながら声を掛けても、ほとんど反応を示さないといった生徒なのである。それが、友達二人と自転車で走りながら、わざわざ自転車を止めて「平居先生、こんにちはーっ」と来た。

 もちろん、私としては悪い気はしない、いや、嬉しくなって、元気に挨拶を返した。するとM君は、「先生、冬休みは補習とかしてくれないんですか?」と言う。これまた私は驚いた。M君がそんなことを気にしているとは全く思ってもみなかったのである。むしろ、こちらが声を掛けても煙たい顔をされるのがオチだ、と思っていたのである。私も、年度末へ向けて成績不振者対策は考えなければならないところだったので、後日連絡する旨M君に告げた。

 たったこれだけの出来事である。しかし、授業中に私が観察していることと、実際に彼らの心の中で起こっていることは違うのかも知れない、自分の目に映るものによって、彼らへの期待をあきらめてしまうことはよくない。そんなことを思った。この一事によって、爽やかな、いい週末になったような気がする。