大会でのリタイア



 県総体が終わった。私は山の大会に行っていた。山で何を競うのか?とは、実にしばしば聞かれることで、答えは長くなるので今は触れない。登山がスポーツとして認められるためには「試合」が必要だ、という情けないほど貧しい発想で生み出された(と推測される)変なシロモノである。幸いにして、勝負に賭けている学校は少なく、交流会的な雰囲気も強い。健全と言うべきだろう。

 一高は今春の入部者ばかり多く、「1年以上の登山経験を有する者」という参加資格を満たす者が1名しかいないので不参加。登山専門部という組織の役員である私は、生徒が不参加だから私も行かない、とは言いにくく、一人で参加した。気楽とも面倒とも寂しいとも言える。行った先は船形山である。

 私の係は女子隊長。大会を鼻からバカにしている私が、大会にあまり嫌がらずに行くのは、毎回この役が待っていて、新人大会と合わせて年に2回、女子高校生と山に登れるからである(?笑)。今回、女子はたったの6パーティー、しかもそのうち3パーティーがリタイアという波乱の大会だった。リタイアは誰もしたくない。出来ることならみんなと山頂に立ちたい。いつもリタイアの大半は、最も長いルートを歩く二日目に発生するが、今回は3つのパーティーのうちのひとつが三日目にリタイアした。厳しい二日目を乗り切っただけに、あと少しの所でリタイアする悔しさはひとしお。多少遅れても同じコースを歩き通したいというパーティーに、リタイアを勧告するのは私の役目。こちらもつらい。しかし、安全や大会運営を考えるとやむを得ない。

 彼女たちは、私の目の前でひどく泣いた。しかし、山は逃げては行かないし、体調を崩した人を責めることもなく、慰め合いながら一緒に泣ける仲間がいることは素晴らしい。それで十分ではないか。今回のリタイアは、彼女たちの人生の中で、とても貴重な宝物になるに違いない。否、そうなって欲しい、と思った。