エノラ・ゲイの機長



(11月3日朝日新聞 ポール・ティベッツ氏の訃報引用 ティベッツ氏は広島に原爆を投下したB29エノラ・ゲイ号の機長だった人)

 奇しくも読書会で『夏の花』を扱って僅か10日余りの先週末、こんな訃報が各紙に載った。太平洋戦争やら原爆というものが、また一歩遠ざかったという感慨を抱いた。

 それにしても、原爆の投下を正当と考える発言をする一方で、原爆批判派を恐れて、葬儀も墓石も拒否したというところに、非常に複雑な彼の胸中が表れている、と思う。結局、彼も、何の迷いもなく原爆やむなしと考えていたのではなく、それなりに悩み、苦しんでいたのではないだろうか。戦争は、敗者だけではなく、勝者にとっても、つまりはあらゆる人にとって苦しく、辛いことなのだ。合掌。