瀬見温泉



 週末は、2日間、家族で山形に行っていた。10月に石巻線のSL見物に一日を費やした話を書いたが、じゃあこの次は、SLの引く客車に乗って出かけよう、という話になった。幸い、発売開始後1秒だか5秒だかで完売するという切符も手に入った。私は、以前ドイツ旅行について書いた時に触れた通り、「客車」の快適さを非常に愛している。別に、客車を引くのはSLであろうが、電気機関車であろうが構わないのだが、不幸にして日本では、こういう機会でないと客車に乗ることもままならないし、平均速度が30キロ/hに満たないというのも気に入って、どうせ正月も家族で旅行などとはいかないのだから、何とかして時間を作って行くか、となったのである。

 土曜日は小牛田→新庄。私達の隣のボックスには村井県知事が乗っていた。県政に文句があって一言物申そうという時には非常に遠い人だが、まさか「この機会に」ともいかず、横目に見ていただけであった。全ての停車駅で大なり小なり歓迎行事があり、沿線には多くの人が詰めかけて、列車の通過を見送っていた。

 例年になく温かい12月で、県境を越えても雪はほとんど見られなかったが、天候に恵まれ、神室連峰や鳥海山の雪景色は美しかった。この日は、瀬見温泉という所の、記念物的に鄙びた旅館に泊った。この温泉は、平泉へ向かって逃走中の源義経一行が発見したという言い伝えがあるとかで、授業でやっている『平家物語』や『義経記』を、ふと思い出したことであった。

 イベントではなく、もう少し静かでひっそりとした道中ならなおよかったのに、とは思いつつも、まあ、のんびりした平和な週末であった。