薬物乱用防止講演会と山行届け



 火曜日に行われた薬物乱用防止講演会は、脱走した生徒が多く、学年全体で50以上の空席があるという異常なものとなった。おそらく、ごく単純に「面白くなさそうだ」とか「自分には関係ない」といったところだろうと思う。警察から来る人が、「薬物の濫用は止めましょう」という説教だけで50分間もたせることは出来るはずがないので、一体どんな話をするのだろうという好奇心は持って欲しいし、もう一つ、私は次のようなことを思い浮かべてしまう。

 山岳部が山に登る時には、必ず、学校の他に、高体連登山専門部と県警地域課というところに「山行届け」というものを提出する。いや、これは山岳部のみならず、山に登る全ての人の義務とも言うべき作業だ。これが出ているかどうかで、遭難した時の救助の迅速さ、確実性が全く違ってくるのである。ところが、この作業をきちんと行う人は驚くほど少ないらしい。面倒くさい、と同時に、大抵の人は自分が遭難するとは思っていないのである。そこでよく言われるのは、「届けを出している人は遭難しない、遭難するのは無届けの人だ」ということである。さもありなん。届けを出す人は、自分にも遭難の可能性があると思っているから慎重になるし、届けを出さない人は、自分は大丈夫だと思っているからいい加減な準備で、乱暴な山登りをするのである。自分を見つめる冷静さと、自然の力に対する謙虚さ、これらを計るバロメーターが山行届け、という訳だ。

 薬物というのは、特に昨年来、大学生・スポーツ界でその広範な汚染が深刻な問題となっている身近な話だ。先週、講演会に出ていた人は多分大丈夫。将来、薬と関わり身を滅ぼす人が出るとすれば、それはサボった50人余りからであるに違いない。