沖縄問題、または日本人の質について



 昨秋以来、私はずっと「沖縄どうなるのかなあ」と、手に汗握るような気持ちで状況を見てきた。世の中にこれほどの難問があるのか、鳩山首相の言動はその割に軽いなあ、と心配していたのだが、果たして、その通り。明るい展望が見えないままに、リミットの5月末は、ものすごい勢いで目前に迫ってきた。

 世論調査の結果によれば(どこの会社によるものも似たり寄ったり)、鳩山政権の支持率は急落を続けており、その要因の一つが迷走を続けて決着が付きそうにない沖縄問題であり、首相のリーダーシップが疑われているのだそうである。

 私は、日本のような民主主義国家(民意のレベルが高いとは思わないが、少なくとも選挙等のシステムは相当しっかりしている)における政治というのは、国民の質を非常に良く反映していると思っているので、さもありなんと思うと共に、鳩山首相に同情もしている。

 日本中の全てとは言わないまでも、多くの自治体が、米軍基地を沖縄から移して来ることについて「ウチはいいよ」「俺の所に来いよ」と言っているのなら首相の決断力も問われるが、恐らくは全ての場所が自分の問題となると「断固拒否」でいながら、沖縄の米軍基地を動かせない首相の責任を追及するのはまったく身勝手だと思う。

 日米同盟の是非に関する議論からスタートして、「不要」という結論でも出るならともかく、迷走の多い鳩山政権でさえ日米同盟の必要性についてはぶれておらず、おそらく日本国民全体というレベルでも、「不要」論が強いとはとても思えない状況で(ちなみに私自身は願望的「日米同盟」否定派だ。「願望的」と書いた通り、私が独裁者になったとしても日米同盟を崩せる自信はない。詳しくは今は触れない。)、今のように基地がまるで変死体か産業廃棄物であるかのような押し付け合いをやっていたら、アメリカが怒り出さない方がおかしい。前政権との関係で、「日本」という国の連続性についても疑念と混乱は生じて当然だろう。アメリカの今の冷たい対応も、十分に寛容だと私には思われる。

 もしも、全国どこでも基地の候補地になり得るなら、この際、「日本全国首長くじ引き大会」でもやればよいと思うが、不幸にして、地理上の問題から適地は限られているらしい。だから日米同盟の「恩恵」を受ける大半の人は、いつまでたっても基地が他人事で、暢気に鳩山政権を非難していればよい、ということになる。鳩山政権への支持が失われた結果として、近い将来自民党が政権に返り咲くようなことがあれば、普天間問題は当初の日米合意に戻り、沖縄の負担はもとのままだが、その痛みには関心を払うことなく、大半の日本人はやれやれ一件落着と一安心するのだろう。それが今の日本人の質、ということになる。

 現状において、この問題を解決しようと思えば、原発と同じ、徹底した「利益誘導」しかないだろう。財政赤字が大きかったり、失業率の高い地域に、膨大な「ニンジン」をちらつかせる。それにかかる費用は、米軍基地(自衛隊も含めた「軍事施設」としてもよい)を持たない地域に特別課税でもして捻出すればよい。基地に無縁の地域の人々が、その特別課税にすら文句を言うようなら・・・、守るほどの国でもないので、いっそのこと日米同盟も自衛隊も解体して日本中の基地を取り壊し、後はどうにでもなれ、と開き直っていればよいのだ。案外、こっちの方がうまくいったりして・・・(笑)。