卒業生便り・・・「水産高校日記」



恒例の『卒業生便り』(62回生版)が発行された。昨年度の担任として駄文を寄せたので、ここにも載せておく。


4月1日 宮城県水産高等学校に着任する。

4月2日 初めての職員会議。一高とずいぶん違うことがたくさんあって、なんだか面白い世界が広がっていそうだ、という期待を持つ。

4月8日 新任式、始業式、入学式。水産高校は生徒が379名しかおらず、しかも今日は全校生徒がそろうわけではないので、体育館に生徒が並ぶと、たったこれだけ?!という感じ。全校に女子が10人なので、女子はほとんど目につかない。まるで、男子校に対する未練があって異動した感じだ。

4月9日 対面式。一高は一高、宮水は宮水で独特である。

4月13日 「下架」を見に、艇庫へ行く。実習用のカッターやモーターボートを、今年度初めて海に下ろす作業だ。着任して初めて海の作業を見た。実技の先生は格好いい。

4月19〜23日 校歌練習。体育館で生徒会が指導して全学年一斉にやる。水産高校にいたことのあるS先生から、「宮水の校歌は面白いよ」と聞かされていたが、要は明治時代の「教育唱歌」の生き残りであって、現代感覚からすれば「面白い」のである。この学校は、一高に匹敵する創立114年だ。

4月21日 宮城丸の出港式。航海類型というコースに所属する3年生が、ハワイ沖でのマグロ延縄漁実習に出発するのを、全校挙げて見送る。船内も見せてもらい、実に楽しかった。何とかして一度、付いて行きたいものである。帰港は2ヶ月後。

4月27日 遠足。学校からわずか3?の県水産センターまで歩いて見学に行き、浜の掃除をし、サンファン館で昼食をとって解散。わいわいがやがや・・・。

5月9日 地区総体。石巻では、県総体の予選を一斉に実施する。私は、学校で生徒と空手の応援。保育所が休みのため、やむを得ず子供を連れて行ったが、生徒もかわいがってくれた。相撲部の練習試合も見た。間近で見る相撲は、テレビの大相撲より面白い。

5月10日 昨日に続き、地区総体の応援後、実習場を見学に行く。学校の近くに、巨大な養殖実習施設がある。増殖研究部諸君のちくわ作り実習にまぜてもらい、施設の見学をさせてもらい、船で万石浦や外洋にも連れて行ってもらい、甚だご機嫌であった。

 離任式の時には、見送りありがとう。一ヶ月間、見るもの聞くもの新鮮で面白く、刺激に満ちていた。生徒は楽しそうに学校に通っている。全県一学区だから、出来れば一高に行きたかった、一高に行っている人が羨ましい、なんて誰も思っていない。大学進学についても同様。行きたい人は行けばいいじゃん、行きたい大学に勝手に行けば・・・という感じ。

 例によって平居は嫌味なやつだと思うかも知れないけれど、世の中には自分の知らない果てしない世界があって、そこでいろいろな人が、いろいろな価値観で幸せを求めている。それを知れば知るほど、何か(誰か)と比較をしなくても自分が満足できるような、自分にとっての「絶対値」を探さなければということを、私自身が身にしみて感じている。がんばってね。                    (5月13日記)