デブへの道、デブからの道



 異動して3ヶ月、実にいろいろなことが変化したが、体重の増加もそのうちの一つである。3kg余りの増加である。たかが3kgと言ってはいけない。卒業式や入学式で着る背広が、高校卒業だったか二十歳だったかで親に作ってもらった一張羅であることを誇り(?)としていた私のダンディズムにとって、なかなかに深刻・重大な問題なのである。

 なぜ太ったかというと、1)通勤にエネルギーを使わなくなった、2)土日が休みになったので、家族におだてられてキッチンパパとなり、休日は日がな一日何かを作っては食う、ということを繰り返している、3)C型肝炎が治癒して2年、酒量が日々増える傾向にあり、それに伴って脂っこいものをよく食べる、といった理由が挙げられる。

 とりあえず、3月までよりも時間はあるので、少しずつ走るようになった。

 いかにもヨソ者扱いというのが嫌で出る気などなかった一高の強歩大会に、やっぱり出ようかなぁ、そういう目標でもないとデブ化にブレーキがかかるほどまじめに体を動かさないしなぁ、と考え始めたのは5月の下旬であった。ところが、一高強歩大会の二日後は、現任校である水産高校の文化祭(「錨章祭(びょうしょうさい)」と言う)である。あれこれ聞いてみると、二日前に学校を空けることが許される雰囲気ではない。どうしようかなぁ、と思っていたちょうどそんな時期に、職場の若い先生から、ふと「きたかみ市民マラソン」というものに出ませんか、と声を掛けられた。10月10日に岩手県北上市で開かれるフルマラソンの大会らしい。申込み多数で抽選、ということもなく、関門閉鎖時間が比較的緩やかなので、素人が完走するにはよい、ということだった。

 私は、走ることを自分の趣味だとは思っていないし、従って、自分を「市民ランナー」だとも思っていない。ボーッと立って、人が何かをしているのを見ているのが苦痛なのと、生徒をからかいながら走るのが楽しいので、自分が勤務している学校のマラソン(強歩)大会には、事情の許す時に限り進んで出場していた、というだけである。市民マラソンの大会に出るなど、仰々しいというか、気恥ずかしいというか、走ることを趣味として認めることを押しつけられそうで、まったく気乗りしなかったのであるが、水産高校から若い教員が1人ならず3人も出るというので、彼らと楽しく一日を過ごし、夜はどんちゃん騒ぎというのなら、出るのも悪くはないかなと思い始め、遂に申込みをしてしまった。

忘れてはいけない。目的(原点)はデブ化を止めることである。この2ヶ月ほど走っても、それにブレーキがかからないのは心配だが、食事制限(おやつと酒を減らせばいいのだ)も含めて総合的に、まずは10月まで、デブ化と戦うことにしたのである。さて、どうなることやら・・・。