落ちたらどうしよう?・・・「岩場の教訓」



(9月15日付「第2次月曜プリント」より、加筆訂正して転載)

 先週の土曜日は、前にいた学校の部活(山岳部)のコーチとして、二口沢という所に「沢登り」の引率に行っていた。仙台市内の最高気温が32,2℃という、この時期としては珍しい絶好の沢登り日よりで、私も童心に返って川遊びに興じることが出来た。

 しかし、私はこの「沢登り」という分野が得意ではない。岩登りの要素が大きいからである。生徒をサポートするのも危ないから嫌だが、正直言って自分自身も怖いのである。私は岩場に立つと、「ここで落ちたらどうなるかな?」と必ず考えてしまう性格なのだ。すると、実にさもない岩場でも、心の中には恐怖ばかりが募ってくる。世の中には、標高差1000mを超える垂直の壁を、道具を一切使わずに登ってしまう人もいる。ちょっとしたミスやアクシデントがあれば、体を止めてくれる物は何もない。数百m落下して死ぬだけである。私には、狂気の沙汰に思える。おそらく、そういう人は、今からどう登るかだけを考えていて、落ちたらどうなるかなどということは一切考えておらず、下を見たりもしないのであろう。

 なるほど、失敗した時のことを考えると、体は動かなくなる。行動的であるためには、自分が進んでいく先のことだけを考え、失敗したら、とは考えないことが必要であるらしい。これは、私にとっての「岩場の教訓」である。

 【視線の動く人とは?・・・3年生は就職試験!】

 3年生はいよいよ明日から就職試験である。それに先立ち、先週から4日間に渡って模擬面接が行われていたことは、諸君も知っている通りである。

 私も2回、面接官になったが、この時期になるとさすがに3年生は真剣そのもの。真面目に学ぼうとする高校生に付き合い、何かを教えるというのは、これほどまでに気持ちのいいことなのかと思った。いや、普段の授業でそういう思いを抱けないことの方が異常なのだろう。

 ところで、今年の模擬面接は、昨年までのものとは少し変わっていた。それは、生徒の目の動きをチェックして欲しいと、進路指導部から特別な用紙が配られたのである。

 こんなことがなぜ始められたかというと、視線が動く人は人の話をきちんと聞けない人だというデータがあり、そういう人を会社は採用しないのだという。

 チェックシートに面接中の生徒の視線を記録し、「あんたは視線がよく動くから直さないとまずいよ」みたいな指導をするだけで、「視線が動く=人の話を聞けない」などという大きな問題が、簡単に解決するとは思えないが、まぁ、やらないよりマシということなのであろう。

 なお、「人の話をしっかり聞く」とは「人に従う」「人の言いなりになる」ということではない。質問するにしても文句を言うにしても、まずは相手のいうことをよく聞き、理解するのが大切だということである。確かに、それが出来てこそ、公平・謙虚・冷静にものを考えることも可能になる。

 幸い、諸君は就職まで2年ある。人の話を聞く姿勢を身に付けることは十分に可能だ。しかし、自分自身の問題意識がなければ、先生が言ったって改善などされない。全ては自分の意識、やる気である。

 【不言実行、有言実行・・・行動は言葉より重い】

 先週の木曜日に、一部分ではあるが、教室の水拭きをした。一応きれいになったとは思う。

 みんながやりたがらない作業をすると、一人一人の人間性というものがよく表れる。何も言わずに黙々と作業している人、口はヘラヘラうるさいが、それなりにやっている人、言い訳ばかりして逃げ回っている人・・・。言葉ではごまかせても、行動はごまかしがきかない。私だけではなく、同級生同士ででも、人は言っていることではなくやっていることで評価を決めるものだと思う。心しておこう。