「必需品」なんてこんなもの



(10月19日付「第2次月曜プリント」から加筆修正して転載)

 先週土曜日の臨時登校日(9月21日台風休校の振替)は、意外なほど欠席が少なかった。一方、私は諸君に何も言わずに欠席したので、月曜日は「非難の嵐」かと思っていたら、誰にも何も言われず、拍子抜けというより、むしろ寂しさを感じたほどだった。諸君も大人になったということ・・・か?

 実は、他校の高校生10名ほどを連れて蔵王に行っていたのである。前々から、この日は空いているよと言って引率を引き受けていたので、わずか半月ほど前に、突然「授業だ」と言われても、大人も含めてそれなりの数の人々に迷惑をかけながらキャンセルするわけにはいかなかったのである。

 宿泊は無人の山小屋。ここの何がいいかというと、携帯の電波が届かないことである。誰に言われてかは知らないが、山岳部員でもないのに、わざわざ山へ行ってみようかというくらいだから、元々さほど文明に毒された高校生ではないのだろうが、それでも、携帯電話が通じないということへの当惑は、初めのうち、彼らの表情にありありと見えた。それがやがてあきらめに変わると、写真撮影以外の目的で携帯に触れることはなくなり、友達との会話も弾んで、携帯の存在さえ忘れたかのようになってくる。そう、無ければ無いで何ということはないのだ。「必需品」など、大抵はこんなものである。むしろ、無いことによって濃密な時間は流れ始める。

 終わりに近い紅葉も美しく、夜中激しく降る雨の音に耳を傾けたのも、ろうそくの明かりの下で大人や仲間と語り合えたこともいい思い出には違いないが、案外、携帯電話のない、いわば「透明な時間」こそが、彼らにとっての新鮮な体験として、記憶に残るものだったのではないかと思う。


【動き始めると面白い・・・錨章祭まであと3日】

 予想していたことではあるが、今週に入ってから、何もかもが怒濤のように動き始めた。それでも、残された時間の短さを考えると冷や汗ものであるが、とにかく、いざやり始めてみると面白い!!意外な人の意外な才能が見えるのが行事の面白さである。ただし、舞台組が落ち着きなく騒々しいことに、総監督M君が切れかかっていたことなど、問題も多い(M君が、「騒がしい教室で授業をする先生の大変さがよく分かった」と言っていた。私にとっては、これだけでも錨章祭の収穫!)。

 この期に及んで私が言いたいことは、例によって「逃げるな!」ということである。「こんなことやったって仕方ない」「くだらない」とグチをこぼし、真面目に取り組まない→ろくな結果が得られない→面白くない・・・これを悪循環と言う。私が以前からよく言うことだが、逃げることなく真剣に取り組めば、得られるものは必ずあるが、逃げてしまうと、何も得られないどころか、悪循環による負の連鎖に陥り、やがては上手くいかない理由を人のせいにし始める。こうなると人間は絶対に成長しない。と私が書いたことの正しさは、諸君の短い人生経験に照らして考えても、否定できないのではないか?

 逃げない姿勢を支えるために大切なのは「プライド」である。人間は人から強制されたり、脅されたりして動くのではなく、自分自身のプライドによって動かなければならない。諸君自身のプライドにかけて、いい仕事をしてくれ。