金曜日の夜は、1学年教員団の忘年会ということで、大和町の台が森温泉(山野川旅館)という所に行っていた。震災の影響で、長距離通勤者が増えた結果、宴会は泊まりでなければ大変だということになり、私が「台が森温泉」を希望したら、あっさり通ってしまった。私が言い出したとは言っても、高体連登山専門部が船形連峰で大会を開く時に、いつも「偉いさん」の宿にしていて名前をよく耳にしていた都合、一度泊まってみたいと思っていただけで、いい宿だと分かっていたから推薦したというわけではない。もちろん、他の教員にそんな事情は告げてあった。
しかし、幸いにしてなかなかいい宿だった。小さな山間の一軒宿だが、1995年に改築したという建物はこざっぱりとしていて、食事も十分。私は、温泉といえば、湯温が低くて長風呂ができ、体の芯からじっくりと温まるタイプが好きである。浴室は小さめながら、そんな私にとって格好の風呂であった。
最近は、「日本秘湯を守る会」とかいう団体があって、そのメンバーになっている旅館には、玄関にその旨書いた大きな提灯がぶら下がっていたりする。しかし、秘湯であることを売り物にして人を集めれば、その時既にそこは秘湯ではない。派手なパフォーマンスをする人間に「本物」がいないのと同様、いい温泉は、このように地味にひっそりと存在しているものなのだろうと思った。
金曜日の夜、既に雪が降りかけていたが、朝起きると5センチあまりの雪が積もっていて、空は青空。一面の雪が朝日を受けてキラキラと輝いている。私は2日ほど前から風邪気味だった上、早々に飲み過ぎて沈没してしまったが、里山の思いがけない美しい雪景色も含めて、なかなかのんびりとしたいい一晩を過ごすことが出来た。いや、どんな温泉も雪景色も、いい仲間と一緒でなければ台無しである。若い、友達同士のような気持ちのいい人たちと、一緒に仕事をし、一緒に酒を飲めるのはいい。