荻浜中学校の風景



 昨日は、牡鹿半島にある石巻市立荻浜中学校という所から、「高校の先生の話を聞く会」を開くので来て欲しいという依頼があり、水産高校の営業係である私が出掛けて行った。

 荻浜(おぎのはま)は、万石橋を渡って牡鹿半島に入ってから車で約20分の所にある。近くに家がなく、海に直接面した実に風光明媚なところに建っている。中学校よりリゾートホテルでも作った方がいいような場所だ。

 牡鹿半島で海に面しているとなれば、当然、津波はどうだったの?という話になるが、土地がやや小高いこともあって、校庭に直接建つ体育館や下の校舎は床上まで波が来て大きな被害が出たものの、更に一段高い上の校舎はぎりぎり床下で波が止まったため、避難所にもなり、授業も比較的早く再開できたそうだ。

 昨日の会は、地元の人たちのおかげで復旧した体育館で行われた。

 私の手元に届いた文書に「全校生徒10名」とあったのを、うっかり3年生が10名だと読み違えて行ったら、3年生は4名しかいなかったので驚いてしまった。

 聞けば、昨年から今年にかけて生徒数は半減したそうだ(平成22年=震災前27名、23年19名)。多くは、石巻市内の仮設住宅等に引っ越し、転校してしまった。戻ってくるかどうかも分からない。それでいて、隣の中学校まであまりにも遠いので、統廃合の話は出ていないらしい。近くにある荻浜小学校は更に深刻で、全校生徒は6名(平成22年21名、23年13名)。しかも、2、3年生が各1名、5年生が4名だけだという。この地域は今後どうなってしまうのだろうと、校長が浮かない顔で話していた。

 我が家の近くを見ていても、津波の被害を受けたところは、ガレキ化した家はもとより、一見ダメージの少なかった家も次々と取り壊され、更地がどんどん増えている。荻浜に行く途中の桃浦、侍浜といった場所も、しばらく行かないうちに、すっかりきれいになっていた。それを見ていると、今後、雑草が生い茂り、樹木が伸びて、美しい自然の海岸に戻っていくような気もするし、まったく新しいきれいな集落が生まれるようにも思える。私には、どちらに進むにしても、なんだか希望のある風景に見える。ガレキが撤去され、すっかり整地された集落の跡地は、それほどに美しかった。

 生徒は少なかったけれど、みんなたいへんお行儀が良く、質問もほどほどに出て、気持ちの良い会だった。水産高校に来て、地元で牡蠣の養殖や沿岸漁業に携わる生徒が生まれるといいなぁ。