埼玉県知事の驚きで驚く・・・教員の残業



 昨日、ネットで目にとまったのだが、埼玉県で昨年度1年間で最もたくさん残業をした人の残業時間が2017時間、740万円の手当を受け取っていたという。このことについて、埼玉県知事は「誰が見ても異常」だとした上で、管理職の処分を検討するという。

 2000時間を超える残業とはひどい話だな、1ヶ月当たりにすると170時間か・・・と計算して、ふと思ったのは、多分、教員の世界だと、年間2000時間以上の残業をしている人が、県全体ではなくて、各職場に何人かいてもおかしくないな、ということだ。というのも、実は9月の末に、我が校の弱冠28歳の野球部監督(教諭)が脳溢血で倒れたのだが、その時、某柔道部顧問が、「私だって残業が150時間を超えたのだから、彼も優にそれくらいにはなっていたはずだ・・・」と言っていたからである。

 毎日21時まで部活に付き合えば、それだけで月に90時間、それに土日の部活と練習試合が加わる。休日はほとんどナシだ。休日を8日としても、8時間部活をしていれば、64時間。足して150時間を上回り、年に1800時間を超えることになる。しかも、残業手当は740万円どころか、基本的にゼロで(教員には残業手当というものが、修学旅行のようなごくわずかな例外を除いて存在しない。その代わり?残業があってもなくても本給に4%=20分ぶん(笑)の割り増しが付く。修学旅行?1日3000円くらいではなかったか?=ゼロの数を間違えてはいません、念のため。)、休日の部活に4時間を超えればという条件で1日当たり2400円の手当が付くだけだ。もちろん、「誰が見ても異常だ」などとは誰も言ってくれない。しかも、考査の採点(考査問題は校外に持ち出してはいけないことになっているが、現実がそれを許さない)や教材研究など、持ち帰り仕事という「隠れた残業」がこれまた少なくない。小学校は多少マシかも知れないが、中学校はおそらく高校以上に状況が悲惨である。

 私は自分の体力・能力の程度を知っているのと幸運とによって、そんなメチャクチャな生活はしたことがない。だから、自分のことではなく、とにかく部活等に拘束されてひたすら仕事をしている人たちを横目で見ながら、本当に気の毒だなぁ、これでは干からびた教員しか育たないよなぁ、本人にとっても生徒(社会)にとっても由々しきことだなぁ、と日々思っているから、そういう人たちのためにこんなことを書いているのである。

 確か、過労死や過労による病気発症の判定基準によれば、発症の直前6ヶ月に月当たり45時間で因果関係が疑われ、直前の1ヶ月100時間、または、2〜6ヶ月にわたり月80時間で因果関係が強いとされる。つまり、年に直せば(6ヶ月を2倍すれば、月当たりは少し減るはず)2000時間どころか、500時間で危なくなり、900時間でレッドゾーンだ。

 埼玉県庁で「誰が見ても異常」とされる事態が、なぜ全国の学校では放置されているのだろう。なぜ教育行政官や管理職は処分の対象にならないのだろう。埼玉県知事は2000時間の残業に心底驚いた風だが、私は2000時間ではなく、それほど驚きに値することが一方では手つかずに放置されていることにこそ驚く。