寂しい上野々スキー場



 今日は平日である。にもかかわらず、友人の家族と一緒に、昨日から鳴子温泉に行っていた。ま、私的な忘年会である。

 メジャーな温泉地の中では、鳴子が私のお気に入りである。何しろ、源泉が9カ所もあって、9種類のお湯が楽しめる上、「鳴子ホテル」というコストパフォーマンス№1間違いなしの宿があるからである。JRビュープラザで出している「悠湯紀行」というプランを使うと、朝晩贅沢なバイキング、豪華昼食付き24時間滞在、更に石巻から往復のJR切符(正規運賃だと往復3200円)が付いて、クリスマスの夜なのに大人11200円である。部屋も広くて、ものすごくきれい。ひんしゅくを買うので、仕事も本も持って行かず、がらがらのローカル列車でわいわいがやがや、さんざん食べて、繰り返しいろいろな風呂に入るという、ひどくぐうたらな2日間を過ごしてきた。

ところで、今日の午前中は、昼まで時間があるし、朝は食べ過ぎたし、というわけで、1キロほど離れた上野々スキー場に散歩に行った。鳴子も、花渕山スキー場が何年か前に閉鎖となり、車で30分ほど離れた鬼首(おにこうべ)を別にすると、温泉街から気軽に行けるスキー場はここだけになってしまった。とは言え、この上野々スキー場は、短いリフトが並行して3本設置されているだけの、非常に小さな、お子様向けスキー場なのである。我が家も同行の家族も、子供が小さいので、1キロ歩いて、多少の雪合戦でもやって戻るのがほどよい午前の運動だろうと思った。私が冬の上野々に行くのは、多分40年ぶりくらいである(数年前の春に、車で通った記憶はある)。

 スキー場の下のロッジや食堂などはすべて店を閉めて、廃墟に近くなっていた。スキー場のレストハウスは開いていたが、灯りもついておらず、人気は全然ない。自動販売機が一台あり、ブルーヒーターが1台燃えていた。ストーブの回りには、誰かの荷物が少し放置されていた。丸テーブルが何台かあっても、椅子はなく、折りたたみ椅子が壁に20ほど立てかけてあるだけだった。事務所には灯りがついていて、やがてスキー場パトロールの方らしき人が一人現れた。

3本あるリフトのうち、2本は動いておらず、しかもそのうちの1本は椅子も取り外してある。よく見ると、一番奥のリフトだけは動いていて、数人がゲレンデを滑っていた。 なんだか、いたたまれないほど寂しい光景だった。雪はスキーに不足のない程度にあったし、後で確認したところによれば、22日にオープンしたようである。

 鳴子は、昔からスキーの盛んな場所だった。蔵王は町からスキー場が遠いが、鳴子は近いので、幼い頃からスキーに接するチャンスが多かったのだろう。インターハイや国体の選手の多くは、アルペンとノルディックとを問わず、鳴子から出た。

 確かに今は子供の数も減っている。しかし、これはなんぼなんでもだ。冬休みに入った小学生たちは、どこで何をしているのだろう?例によって私は心配する。まさか、部屋に閉じこもって小さな画面をのぞき込みながら、ピコピコやっているのではあるまいな・・・?本当はこの小さなスキー場にはリフトも要らない。子供たちが歓声を上げながら、階段登高で一生懸命に斜面を登り、滑り降りるということを繰り返している光景がよく似合う。 雪がたくさん降り始めたこともあり、もともと雪遊び対応の服装をして行かなかったこともあり、うらぶれた風景に興をそがれたこともあって、早々に宿に引き返した。