これは酷だ・・・新設医学部への文科省条件



 先日、東北に設置される医学部の設置者が決まったという話から、医療過疎の問題について少し書いた。私は、医療過疎の解決のためには、医師の増員よりも偏在解消方法を考える方が先だ、という立場である。

 さて、今日の『河北新報』のトップニュースは、文部科学省の新医学部構想審査会が、東北薬科大学に7つの条件を提示したというものであったが、それを読んで、私は憤りにも近い驚きを感じてしまった。記事によれば、7条件とは以下の通りである。

1)運営協議会の設置

2)医師の偏在解消の枠組み確立

3)総合診療医養成の体制整備

4)地域医療に支障を来さない教員医師ら確保策の具体化

5)実効性の高い東北への卒業生定着策の策定

6)120人とした入学定員の見直し

7)その他、審査会意見の可能な限りの反映

 当事者の思いが記事になっていない中で、私が余計なことを言うのも変だが、この中で、条件として仕方がないと思えるのは、3と4くらいだ。1は詳細(特に目的)が分からない。だが、審査会は、構成団体を具体的に列記している。それを見るに、新設医学部が、地元と協調し、横の連絡を密にしながら、地域に上手く入り込めるようにすることを目的としているようだ。だとすれば、審査会が条件として出さなくても、必要になれば大学側が言い出すはずのことであり、大学が設置しようとして上手くいかなければ、文科省が大学の側に立って設置をサポートするというのが正しいやり方ではないだろうか?審査会が、あらかじめ「条件」という強い形で出すのは、余計なお世話という感じがする。6は、国全体の医師養成計画に関わる部分なので、文科省で具体的な人数を割り当てればいいだけの話だ。7は、「その他」が何か現時点では分からないので、「何でも言うこと聞けよ」と言っているようで不気味だ。

 だが、最もはっきりと問題なのは、2と5である。現場の一高校教員として、いかにも文科省らしいな、と思う。何かにつけて偉そうに命令するくせに、本当に困った問題は現場に丸投げ、というやつだ。上手くいかなければ現場の責任、である。医師の偏在や地元定着というのが、果たして一大学の責任で解決すべき問題だろうか?もしそうだとすれば、なぜ新設の大学にだけ求めて、日本中どこにでも医療過疎地はあるのに、既存の大学には求めないのだろうか?開学までに難問を数限りなくクリアーしていかなければならない東北薬科大学に、これらを求めるのは酷である。「認可していただく」側の大学としては、文句も言えず、ともかくも何かしらの策を示さなければならないのだろうが、私のような外野も含めて、このような文科省の姿勢をこそ批判していかなければならない。