命の輝き



 今日は宮水の創立記念日の恒例行事、マラソン大会であった。創立記念日は11月15日なのだが、今年は土曜日なので、予備日が取れるように二日前倒しした結果が今日である。明後日から、宮水は119年目に入る。

 もっとも、高校のマラソン大会としてはひどく軟弱で、山越えとはいうものの、たった6.4㎞、制限時間1時間という小さな行事である。しかし、終了後に、球技大会の優勝チームと教員チームによるソフトボールのエキジビションマッチがあったり、生徒会の役員選挙があったりで、1日が終わってしまった。

 マラソン大会には、今年も参加した。27分40秒で26位だった。これだけ見ると、さほど老化はしていないようだが、月曜日に練習をしていて、右のふくらはぎに違和感を感じた。その後大人しくしていた結果、走れはしたものの、最後の100mで明瞭な痛みを感じるようになり、ソフトボールは屈辱の欠場。おそらく肉離れである。3年ほど前にも、マラソン大会直前に同様の症状を呈して欠場しているので、これが古傷として繰り返されるようだと嫌だな、と、ビクビクしている。やはり、どうもパッとしないのである。

 話は変わる。

 昨日は、栽培漁業類型2年生の見学実習にくっついて、サケの孵化場見学に行った。サケは「栽培漁業の優等生」と言われ、古く明治時代には、既に人工栽培して稚魚を川に放流するという作業が行われていた。人間の手によって受精・孵化させ、いいタイミングで放流することによって、自然状態よりもはるかに高い確率で成魚になることができ、水産資源が豊かになる、という仕組みである。

 行ったのは、登米市東和町にある北上川漁業協同組合大嶺サケ・マス孵化場。北上川漁協が捕獲することを認められている52000匹のうち、約7000匹がここで人工授精のために使用され(残りはそのまま出荷)、1〜3月に500万匹の稚魚となって放流される。宮城県でも有数のサケの孵化場である。

 私たちが着いた時は、ちょうど北上川本流・脇谷(わきや)で捕獲された生きたサケが運び込まれたところだった。その中から成熟状態にあるものを選別し、水から揚げて撲殺し(←木の棒で脳天を一撃)、卵を取り出し、精子をかけ、水でさらして受精させる。よくテレビなどで、雄の腹を絞りながら卵に精子をかけているシーンが映ったりするが、それだけでは受精しない。サケの卵は真水に極めて弱く、精子は真水に触れて初めて活動を始めるという相反する性質がある。これはやっかい。自然界では、産卵と放精が水中で同時に行われるので問題ないが、人工ではそれができないので、卵に精子をかけた上で真水にさらすという3段階の作業が必須なのだそうだ。へ〜〜っ!

 サケのお腹を割くと、完熟した明るいオレンジ色の卵が、ザーッとあふれ出してくる。イクラを食べられるようにする時には、薄い皮で繋がっている卵をバラバラにする作業が面倒だが、それはまだ卵が熟成していないからであって、完熟した卵というのは、何もしなくても一つ一つがバラバラの状態であふれだしてくるものなのだ。逆に、そうならないものは卵巣ごと取りだして、イクラとして出荷するらしい。プロの技はすごい。Tさんという宮城県を代表する名人(まだ若い)が作業を見せてくれたが、作業台の上のサケにTさんの手が触れてから、卵を取り出し、処理済みの魚体(サケフレークの原料として売る)を隣のコンテナに放り込むまで、7〜8秒という早業だった。

 卵は照明の下でキラキラと輝き、宝石のよう。これがやがて稚魚となって川を下り、オホーツク海まで旅をして、3〜5年後に再び北上川に戻って来ると思うと、なんとも感動的で不思議な気持ちになる。

 伊豆沼のサンクチュアリセンターに寄り道した後、鴇波洗堰(ときなみあらいぜき)のサケ捕獲場へ。時間が遅かったため、残念ながらこの日の捕獲作業は終了していたが、正にうようよ泳ぐサケの群れを見て、参加者一同大興奮。置いてあった大きな「たも網」を見ながら、この網でサケを捕るところを見てみたかったという思いは強かった。土日にでも、朝から子供を連れて見に行こうかな。