春の多賀城



 今春の高校入試で宮水の倍率があまりにも低かったので、私は宮水の宣伝部長を引責辞任した。いや、更迭かも知れない。そして、今年は進路担当(就職係)となった。昨日、その年度初めの研修会が、多賀城東北歴史博物館であった。

 例によって、私は特別な事情がない限り、車で行ったりしない。電車である。その時間の都合で、開会の50分も前に着いてしまった。悔しいことに、野球の試合が雨天中止の前日と違い、春らしい穏やかな好天である。建物の中でぼやっと本を読んでいるのも不健康だと、散歩に行くことにした。何しろ、会場最寄りの国府多賀城駅は、その名の通り、古代多賀城府の遺跡群のすぐそばなのである。

 大昔、小学校の頃にオリエンテーリングのコースとして歩いた記憶はあり、決して初めての場所ではないのだが、比較的近くに住んでいながら何しろ40年ぶりくらいなので、気分はひどく新鮮だ。

 駅の隣の舘前遺跡から多賀城碑(歌枕:壺碑)まで、案内板を頼りにのんびり歩く。外郭南門の所から北を見ると、遺跡群の核心となる政庁跡とそれに続く堂々たる幅広の石段が見えていたが、そこまで行くと結構な時間がかかりそうだったのであきらめ、持参のおにぎりを食べて引き返した。歴史博物館でもらった散策用の地図を見ると、多賀城碑から政庁跡まで「370m徒歩6分」と書いてある。ずいぶん遠くに見えたのだが、なんだその程度だったのか・・・少し惜しいことをした。やはり、「先達はあらまほしきものなり」(兼好)である。

 舘前遺跡の北側にはたくさんの梅の木が生えていて、今が満開。近くには水仙も咲いていて、風は少し冷たかったけれども、のどかな春を感じることができた。遺跡群の一帯は、何とも田舎びて落ち着いた丘陵地帯で、奈良県の飛鳥界隈を彷彿とさせる。政庁跡の奥や、それとは真逆の方向にある多賀城廃寺跡も含めて、のんびりと時間をかけて歩いてみたいと思った。今度、家族でハイキングに来てみよう。