「ちがくて」じゃなくて・・・



 子どもが時々「ちがくて・・・」と言うのを聞きとがめて、目下、矯正指導を行っている。「自分でそんなこと考えられるなんてすごいね!」「ちがくて、先生に教えてもらったんだよ。」といった具合である。我が家の子どもだけではない。勤務先の高校でも頻繁に耳にする表現だが、我が子以外についてはあまり文句は言わない。キリが無いからである。それくらい多用されている。「なので」「〜させていただく」(→これらについて)とともに、最近、私にとって最も耳障りな御三家だ。

 言うまでもなく、「ちがくて」は「違う」に接続助詞「て」を付けたものである。ところが、「違う」はワ行5段活用動詞なので、「て」を付けるためには「違い」という連用形にするのが正しいが、「違いて」では古語のようだし、発音しにくいので、促音便化して「違って」となる。「ちがくて」というのは、「違う」が動詞であるにも関わらず、形容詞として扱われてク活用した結果であろう。過渡的形態(?)として、「違うくて」という表現も耳にしたことがあるような気がするが、記憶が定かでない。「違う」は終止形活用語尾がウ(ウ段の音)なので、動詞であることは間違いないが、動作よりは性質・状態を表すと考えるのが自然な言葉なので、「違う」を形容詞として扱い、「ちがくて」という連用形にしたくなるのは、一応理解できる。(そんな理屈を考えながら話しているはずはない。自然にやっているとしたらすごいことだ!!)

 しかし、私の語感ではどうしても馴染めない。強い違和感が残り、「汚い言葉」と認識してしまう。少なくとも、自分の子どもには使って欲しくない表現だ。

 そこで、今年の2月くらいから「矯正」に着手した。「「ちがくて」は間違った日本語なので、使ってはいけない。「ちがくて」の代わりに「そうじゃなくて」と言いなさい。」と教え、子どもがうっかり「ちがくて」とやった時には、「え?」と反応すると、子どもはすぐに気が付き、「そうじゃなくて」と言い直す。まだ幼い(小5と小1)ということもあって、素直なものだ。今や、「ちがくて」が口から出ることはほとんどなくなった。

 ところが、自分の子どもの指導をしていると、今まで以上に「ちがくて」が耳に付く。意識して聞いていると、同級生や宮水生はもとより、小学校の先生や、我が宮水の国語科教員の口からも「ちがくて」が出てくる。こりゃあ、もうダメだわ・・・と思った。

 言葉は生き物、絶えず変化し続けている、というのは言うまでもないことだけど、やっぱり私には抵抗がある。そんな私が「矯正」した結果、子どもたちが「お前の言葉、変だよ」なんてからかわれたりするのかなぁ?・・・やれやれ。