中小企業家同友会の「共育懇談会」



 今週はお出掛けウィーク。「インダストリアルツアー」に引き続き、一昨日は、仙台市内のホテルで開かれた中小企業家同友会主催「先生方と経営者の“共育”懇談会」というのに出席した。代表理事の挨拶によれば、学校と会社が若者の成長について意見を交わし、一緒になって考えるための会だそうである。

 宮水からも、仙台市内の中小企業に就職する生徒はいる。だから、そのことについて感謝の意を述べるなり、新たな就職先を探すなりといったことが、表向きの出席理由だったのだが、実は、中小企業家同友会という組織に前々から興味があって、4月にこの懇談会の存在を知った時から、一度参加してみようと思っていた。

 私は、15年くらい前に、中小企業家同友会が主催する講演会に出席したことがある。講師は愛知私立学校教職員組合連合(私教連)委員長・寺内義和氏であった。私と愛知私教連の関係は、今までも何度かこのブログに書いている(→愛知と私の関係寺内氏のこと)。寺内氏は、仰ぎ見るような敬意の対象としてよく知っていたから、彼が仙台に来ると聞いて、中小企業家同友会という組織の何たるかも知らず、喜び勇んで行ったのである。

 聞けば、寺内氏は、中小企業家同友会とは縁が深く、全国各地の同友会組織から呼ばれ、何度となく講演をしているという。確かに、寺内氏は類い希な戦略家であり、話に夢があり、人情味にあふれ、人間としてもスケールが大きいのであるが、私には、いかに「中小」とは言え、企業経営者と労組の委員長というのが、どうしてもミスマッチに思われた。だが、少し立ち止まって考えてみると、このことは寺内氏の偉大さと同時に、中小企業家同友会という組織の柔軟性、前向きで地に足の着いた意識をよく表しているように思われた。私が、この団体に注目し、新聞などでも報道を気にするようになったのは、この時からだ。

 懇談会に出席してみて、その期待というか好奇心が裏切られることはなかった。代表理事の挨拶にもいちいち納得させられたし、「“共育”懇談会」という会の名前にしても、グループ別討論のテーマ「若者が育つ環境作りには何が必要ですか?(←「若者を育てる」ではなく「若者が育つ」である点が重要)」にしても、なんとか共に次世代を育てていこうという、謙虚な姿勢と本質的な思考がよく表れていると思う。

 今まで幾度も、そして昨日も触れたとおり、私は文明の将来に悲観的である。資源・エネルギーと環境の壁(以前は「文明の崖」と呼んだこともある。同じこと。)は、間もなく、間違いなく私たちの目の前に立ちはだかる。現在、企業は効率化を目指して大規模化している。農業だって、輸入品に対抗するためには大規模経営による効率化をするか、極めて付加価値の高い商品作物を作ることが不可欠だ、と考えられているようだ。しかし、私は逆だと思う。農業に典型的に表れているとおり、大規模化は、石油を燃やすことによってのみ支えられる。資源・エネルギーと環境の壁に直面した時、求められるのは分散であり、小規模化だ。今の枠組みの中で、地方創世なぞ無理に目指さなくても、石油が無くなれば、大都市で今のように多くの人が暮らせたりはしない。その時、地方の時代は自ずからやってくるのであり、会社も小規模であることが求められてくる。

 資源・エネルギーと環境の壁は、人間固有の力や、人間関係の大切さをも再発見させるはずだ。そんな時、一昨日の懇談会に集まっていたような良心的な中小企業(経営者)こそが、社会の主流になるだろう。いっそのこと、そんな時代が早く来ればいいと思う。