偉いぞ、フランス!!



 名古屋で、廃棄を委託したカツが横流しされていたという事件があり、けっこう大騒ぎになった。廃棄予定のカツであるということを隠して販売したのは、人をだましたことになるので、明らかに悪いことだが、そのカツを食べた人に食中毒が蔓延したとか、味が変だという話になったりしたとかいうことがないのだから、食べられるものを捨ててしまおうとしたこと自体も、決していいとは思えない。赤福事件の時(→こちら)と同じである。横流し業者が、「もったいない」というのではなく、利益目当てだったすれば(多分そうなのだろう)、その利益至上主義は問題だが、無駄に豊かな現代日本において、食の安全ということに過敏になり、人任せになり、過剰防衛になった結果の事件であることも忘れてはなるまい。多少古くても、食べられるものは値段を下げて売る、最後は飼料にするなどして、できるだけ食品として機能するように扱う、食べられるかどうかは、印字された消費期限だけではなく、人間の五感で判断する、それが正しい道というものであろう。

 いつものように、こんなことを考えながら、問題の会社を叩くだけの報道を斜めに見ていたところ、フランスで、大型スーパーの売れ残りの食料の廃棄を禁じ、慈善団体への寄付を命じる法律が成立したという記事を見付け(昨日の毎日新聞)、感心したり心配したりした。なんでも、世界の食品生産量の3分の1が廃棄されているという現状を変えたいという問題意識を持った、フランス・パリ近郊、クルーブボア市という町の一市会議員の努力が結実した法律だという。そのアラシュ・デランバールという奇特な市議は、SNSを使ってインターネット署名を20万人分集め、下院議員に協力を呼びかけるなどしたらしい。床面積400平方メートル以上の大型スーパーが対象で、違反すると50万円近い罰金が科せられるそうだ。

 私がこの記事を読んで感心した理由は書くに及ばないだろうが、心配した理由というのは、この法律が出来たことで、無理して買わなくても、そのうち寄付が回ってくるさ、と考える「慈善団体」が現れるのではないか、ということだ。この点については、関心を持って、今後の推移を見守る必要がありそうだ。

 思えば、私もかつて書いたことがあるとおり(→こちら)、食糧自給率38%の日本でも、廃棄される食品は膨大だ。今回の毎日の記事でも、約640万トンと書いてある(ちなみに、世界全体では13億トンだ)。こんなことが絶対に許されるはずはない。

 国会で、軍備や憲法改正については、何度も「他国では」とか「諸外国でも」といった答弁が繰り返されるわけだから、ここでは「フランスでは」を持ち出し、日本でもぜひこのような法律を作ることや、もっと廃棄量自体を減らせるような施策を現実化できるようにして欲しいと思う。先日は「私はフランスに対する苦手意識が強い」などと書いてしまい(→こちら)、申し訳ないことをした。偉いぞ、フランス!!