我が家のジオ・ツアー

 今日は、子供たちに野球の練習がない極めてまれな日曜日であった。そこで、私はもともと、3名の専攻科生と一緒に、仙台港で自動車運搬船の見学をさせていただくことになっていたのだが、やむを得ず生徒だけで行かせることにし、子供たちをどこかに連れて行くことにした。
 あれこれ考えた結果、連れて行ったのは鬼首(おにこうべ)である。本当は、早朝から禿岳(かむろだけ、1261m)に登りに行き、その後、吹上高原界隈で地獄谷やら間歇泉を見せ、「生きている地球」を実感させようと思っていた。ところが、娘が2〜3日前に夏風邪を引いてしまったため、禿岳を諦め、後半のジオ・ツアーだけにした。
 ここは、昨年と3年前に、登山の新人大会で訪ねた場所である(→3年前の記事)。その時、面白いなぁ、と思ったが、集団行動だったため、生徒引率で地獄谷はじっくり訪ね、温泉卵作りまでした一方で、間歇泉を訪ねることは出来なかった。私自身、間歇泉は小学校低学年の時、両親に連れられて行った記憶が微かにあるだけである。
 朝、息子が「パパ、もう6時45分だよ」と寝床にやって来たので、それは大変!と慌てて起き出し、着替えて時計を見るとちょうど6時であった。息子が、時計を1時間見間違えたのだ。昨日までの気持ちのいい夏日と違い、雲がたくさんあって、朝からぼやーっと蒸し暑い。
 7:20に家を出た。渋滞など気配もない快適な道を走り、途中、池月の道の駅におやつを仕入れにのんびり寄り道したにもかかわらず、9時半に鬼首に着いた。最初に行ったのは間歇泉である。これは私有地にあるため、入場料が必要だ。大人400円、小学生200円は、少々高いようにも思うが、ただ間歇泉があるだけでなく、整備された庭園になっており、足湯や水着着用で入ると思しき湯船、湯滝(滝壺には入れない)などがあって、割高感はあまりない。メインの「弁天」と名付けられた間歇泉は、10分弱に一度、10m前後まで湯を吹き上げる。もうひとつ、「雲龍」という小さな間歇泉もあって、こちらも約10分間隔だが、高さは1m止まりである。
 地獄谷入り口の駐車場までは車で移動したが、間歇泉から地獄谷入り口までは、歩いても10分くらいである。川沿いの遊歩道に入ると、あちらこちらに穴があって、そこから湯気が出たり、ゴボゴボという音と共に水(湯)しぶきが上がっていたりする。ミニ間歇泉も3つくらいはある。紫地獄という噴泉塔(石を積み上げたような低い小山のてっぺんから湯が噴き出している)の隣に「卵湯」という場所がある(→昨年の記事)。ここを目あてに、私は卵を4個と、玉ねぎを入れるネット、味塩を持参していた。直径数十センチの壺状の穴に熱湯が湧いていて、温泉卵(ゆで卵)を作るのには甚だよい。卵を浸けて、ゆで上がるまでの10分で、遊歩道の終点まで往復することにする。終点の手前には、遊歩道のすぐ左側に間歇泉がある。見ごたえのあるポイントなのに、なぜか名前は付いていない。噴出点が歩道よりも2mほど高い上、湯が噴き出すと歩道も濡れる状態なので、あまり高くは吹き上がらないが、なかなかの迫力がある場所であることを、昨年と3年前の経験で知っていた。しかし、ここは、有料の間歇泉と違って甚だ気まぐれ。噴き出す間隔も、量もまったくアテにならない。従って、子どもがじっとしていられないから、ゆで卵の間に・・・と行ってはみたものの、その時間内に湯が吹き上がる状態を見られたら奇跡だな、と思っていた。案の定、湯が噴き出すところは見られなかった。それどころか、けが人でも出たのか、昨年までは通り抜けられた遊歩道が、無名の間歇泉の手前で通行止めになっている。だが、通行止めの看板の先、間歇泉の横の歩道がほとんど濡れていなかったので、少なくとも私たちが行く1〜2時間前には、たいした湯量の噴出が無かったことが分かる。紫地獄だけではなく、まんだら地獄、雷の湯など、地球が生きていることを実感させてくれるところはそれなりに見られたことだし、諦めがついた。
 川には魚影も見られる。絶えず温泉が流入していて、水温も35度前後かと思われる川である。魚の適応力というのもびっくりだ。息子が、遊歩道の脇でトカゲを見付けて大騒ぎをしている。見ると、上半身はただのカナヘビなのだが、尾がルリ色をしている。尾が切れた後、再生すると最初はこんな色なのかな?などと思っていたが、息子が同様のトカゲを2匹見付けたことで、こういう種類のトカゲがいるのかも、との思いが兆した。今日一日で、息子にはこれが一番面白かった出来事だったらしい。
 地獄谷を出て、鬼首高原キャンプ場のところでゆで卵を食べると、荒雄川に移動して水遊び。水がきれいで、人も少なく、危険のない、いい川だ。
 自動車運搬船を見に行けなかったことは、それはそれで非常に残念だったのだけれど、いい一日だった。野球もいいが、やっぱり、それだけしか許されないような小学校生活はよくないな、こうしていろいろな物を見、経験することも大切だ。そんな思いを改めて強くした。