「君には将来がある」

 野党は追及の構えだが、私は、残念ながら、最終的に首相夫妻は「シロ」になるだろうと思っている。森友学園加計学園の話である。
 もちろん、だからいい、というのではないが、少なくとも安倍首相夫妻が明瞭に「こうしなさい」「こうしてください」と言ったことはなく、「忖度」もしくは「暗示」によって特例措置は取られたと見えるからだ。
 素人なので確かなことは言えないが、したことと結果との間に明瞭な因果関係が認められて初めて、罪というものは成立するはずである。「疑わしきは罰せず」の原則に従ってなのかどうかは知らないが、首相夫妻による特例措置の要求が明示的でない場合、おそらく罪としては成立しない。悔しいけど、させるべきでもない。無理に罪を成立させようとすれば、それはそれで立派な権力の濫用だ。
 以前、私は「処分という形でない処分の方が怖い」と書いた(→こちら)。利益に心動かされるよりも、不利益を回避したい気持ちの方が、おそらく人間にははるかに強い。だから、不利益をちらつかせ、法令上許される範囲のことをして人を動かすなど、権力を握る人間には容易な話であって、何も好き好んで法令に反するような面倒なことをする必要はない。それは、今回のような「特例」を求める時にも当てはまる。首相と深く関係すると言われている学園の許認可が問題になっている状況で、学園担当であるA氏が首相や首相の意を受けた上司から「君は有能で将来のある人だ。仕事はちゃんとしてくれよ」と言われれば、A氏は、仕事をちゃんとすれば昇進のチャンスがあり、ちゃんとしなければ不利益がもたらされる(将来を失う)と考える。そして、仕事をちゃんとするとは・・・あ、速やかに「特例」措置を講ずることだな、と気付く。これでも、「仕事」と表現するだけで、「森友学園」とか「加計学園」という名前を持ち出したり、それとの関係で具体的処分をちらつかせなければ、法令上は「シロ」だろう。これはA氏による「忖度」と言うよりも、むしろ、暗示的強制、柔らかな脅迫である。それでも、やっぱり「シロ」である。まして、この程度の会話さえもなく、官僚の側で勝手に「忖度」したとなれば、いくら問題の多い首相だったとしても、その責任を追及するわけにはいかない。
 不利益を恐れるが故に、理不尽な要求に逆らえず、暗示から忖度することを実質的に強いられる。首相夫妻がこのようなことを意識的にしているとすれば、なんとも狡猾だ。もちろん、真偽は知らない。
 連日、アメリカ大統領の横暴な振る舞いのニュースが入ってくる。社会制度がうまくできているのか、国民性の問題なのか知らないが、FBI長官の対応といい、ドタバタに対する司法省の判断や介入といい、なんだかひどく明瞭・オープンで分かりやすい。あのアホな大統領だって、ある意味では非常に単純明快で裏がない。地球上あっちでもこっちでも困ったものだとため息をつきつつ、そんなアメリカのドタバタに妙な爽快感を感じてしまう。もちろんそれは、今の日本の「忖度」文化に、ひどく陰湿な嫌らしさを感じるからである。首相の身の回りだけの話ではない。