日和山の鳥居

 今週の日曜日、例によって牧山に走りに行き、例によって帰りに日和山に寄り道したら、いつになく多くの人が、神社の方からぞろぞろと歩いてくる。はっぴを着た人も多い。何があったのかな?と思って見ると、鳥居の落成式が行われたらしい。ちょうど式が終わって、みんながぞろぞろと帰るタイミングだったのだ。
 我が家の近所、石巻を代表する景勝地である日和山(56.4m)の頂上には、鹿島御児神社という神社がある。門脇(南浜津波復興祈念公園)側から急な石段があって、それを登り切ったところにある大きな鳥居が、もともと古かった上に、今年2月にあった震度5地震の影響で倒壊が危ぶまれるようになった。そこで、古い鳥居を撤去した上、クラウドファンディングその他でお金を集め、新しい鳥居を建てていた。それが完成したのである。
 先週の日曜日に行った時は、2人の職人さんが、鳥居の足元に雄勝石のスレートを鱗状に取り付ける作業をしていた。こんな飾りは、以前の鳥居にはなかった。職人仕事大好きな私は、汗が冷えるのを気にしながら、上手いもんだな、と思いながら、結構長い時間作業を見つめていた。
 偶然、被災地見物の団体さんが通りかかった。案内人が、その作業の方を見ながら、「雄勝石」のことなどを紹介し始め、やがて、その職人さんが東京駅の屋根葺きをした人であると言った。へぇ~、そうなんだ。私も何年か前に、東京駅が創建当時に近い形にリニューアルされたこと、その際、屋根には雄勝石のスレートが張られたことは知っていた。目の前で黙々と作業する老工が、その作業に当たった職人だったらしい。
 老工は、少しはにかんだような表情を浮かべながら、ぼそりと「俺1人でやったわけじゃねえさ」と言った。当たり前のことではあるが、その控えめな感じが好ましかった。
 我が家から歩いても10分しかかからない場所なのに、我が家から見るよりも遥かに雄大な景色が広がっている。本当にいいところだ。その海にせり出すような高台に、大きな鳥居が復活すると、風景にしまりが出たような感じがする。思いの外早く再建されてよかった。

 

(12月16日付け「学年主任だより№29」より①)

 塩釜神社の紅葉はほとんど散ってしまった。かろうじて、裏参道沿いの2~3本のモミジだけが、多少の葉っぱを付けているが、色はすっかり色あせてしまっている。毎年、最初に色付く木も、最後に色付く木も毎年必ず同じだ。最初の1本が色付き始めたのはなんと9月下旬のこと。それから2ヶ月半。生えている場所の土壌や日当たりの違い、そしておそらくは何よりも木1本1本の個性(素質)によって、これだけバラバラと紅葉の時期がずれる。面白いものだな。
 雪釣りも設置され、新年を迎えるための大きな絵馬も設置された。ああ、もう年の瀬なのだ。そんな実感が湧き起こってきた。学校もあと1週間。


裏面:11月30日付け毎日新聞より「そこが聞きたい」を貼り付け。ショパンコンクール審査員・海老彰子氏へのインタビュー記事。見出しは「人と共に移ろう音」。
平居コメント:平易でありながら深い芸術論になっている。
裏面余白に:10月26日付け朝日新聞より「弦楽器製作 快挙続く」を貼り付け。イタリア在住の日本人弦楽器製作者・高橋明氏がピゾーニェ国際弦楽器製作コンクールでチェロ部門優勝、バイオリン部門準優勝を果たした、という記事(横長でさほど大きくない)。
平居コメント:華やかなショパンコンクール入賞者に関する報道に隠れて、こんな「快挙」もあった。16歳の時に、独学で最初のバイオリンを完成させたとは、その実力もともかく、その年齢で「作ってみよう」という意欲を持ったこと自体に、私はむしろ驚く。楽器なしに音楽はなく、いい楽器なしに名演奏もない。