初・天王星!!

 昨日は、皆既月食天王星食が大きな話題になった。中学3年生の時から天体望遠鏡に親しみ、高校時代は天文物理部にも籍を置いていた私は、今でも宇宙論や天文現象に強い関心を持っている。皆既月食は、昨年の5月26日にもあった。あまりにも平凡な天体ショーなので、ただの「皆既月食」ではインパクトに欠けるからか、「スーパームーン皆既月食」と宣伝されていたことが記憶に新しい。
 今回の天王星食は、本当に特別な現象だ。なにしろ、計算で過去5000年さかのぼっても、少なくとも皆既月食との抱き合わせでは起こっていないらしい。
 そもそも、天王星は見ることの非常に難しい天体である。6等級=肉眼で見える限界の明るさ、とは言うものの、実際には、街の灯りで白っぽい日本の空では、肉眼で見ることはできない、と言っていいだろう。しかも、あまりにも地球から遠いため、一般家庭に置ける程度の望遠鏡では、点にしか見えない。すると、恒星との見分けが付かない。苦労して見付けても、「見た」という事実があるだけで、リングを持った土星、縞模様や衛星の見える木星のような面白さ、感動は得られそうにない。
 と言うわけで、私は、あまり真面目に探そうとしたこともなく、この歳になるまで天王星は見たことがなかった。ところが、昨日の天王星食である。皆既月食の最中なので月が暗く、暗い星を探しやすい。しかも、仙台では20:44に天王星食が始まると分かっているので、その時間に月に接近し、やがて隠れる星を探せばいい。天王星を今回ほど容易に見付けられるチャンスなど、他にはちょっと考えられない。おそらく、決して面白くはないだろうが、それでも一度見ておこう、と思った。
 20:30頃に、まずは30×10(対物レンズの口径30㎜、倍率10倍)の双眼鏡で探してみる。なんとなく「これかな?」と思われる小さな点は見えたようが気がするが、「見えた」とはっきり書けない程度に怪しげなものだ。仕方がないので、次に12㎝の反射望遠鏡を持ち出す。高校時代に買った足立光学製の鏡を、もう使わないな、と思って友人にあげたところ、東日本大震災後に、激励の思いを込めた手作り望遠鏡になって返されてきた、という曰く付きの望遠鏡だ。焦点距離が1000㎜と、反射望遠鏡にしては長く、しかも手動の経緯台に載っていて、地球の自転に合わせて星を追尾するのが難しいという難点がある。そのため、名品と名高い足立鏡に星の目を見せてやれない状態が続いていた。
 40㎜の接眼レンズを装着し、25倍という低い倍率で望遠鏡を月に向ける。天王星は簡単に見つかった。さすがにはっきりと見える。噂通りの青い星だ。地球は、宇宙空間から見ると青く見えるため、「Blue planet(青い惑星)」と呼ばれることがある。天王星だって青いではないか、地球と同様に、多くの命を育んでいるのではないか?などという妄想がわき起こってくる。しかし、実際には、大気に含まれるメタンが赤色光を吸収しているから青く見えるだけであって、大気の大半は水素で、太陽からの距離も地球・太陽間の約19倍とあれば、生命など存在のしようもない。
 せっかくだから、娘に惑星らしい惑星を見せてやろうと、ちょうど見えていた木星と火星に望遠鏡を向けた。木星は本体に二本の縞、そして4つの衛星が横一列に並んで美しく見えた。火星は、ただ丸く見えただけ。望遠鏡を少し運んで、西の視界が開けているところまで行けば土星も見えたはずだが、面倒に思ってしなかった。
 天体観察をするには最高の夜だった。もう少し早い時期なら、蚊の襲撃があっただろうし、もっと後なら、寒さに凍えなければならなかった。夕食後、寝るまでの間の時間というのも絶妙。本当に久しぶりだったけれど、やっぱり星の観察はいいものだ。今度は横着せずに、娘に土星を見せてやらねば・・・。