消費税か所得税を上げよ

 おそらく全国三紙では報じられていないのではないか、と思うが、先週土曜日の河北新報第1面トップ記事は、「防衛省世論誘導研究着手 SNSで支持拡大工作」というものであった。前文(リード)には次のように書かれている。

防衛省人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響力がある『インフルエンサー』が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定の国への敵対心を醸成、国民の反戦厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている。」

 これはたいへん恐ろしいことである。戦争が始まったら、もしくは始まりそうになったら、国が積極的に国民を洗脳するぞ、と言っているのだからだ。冷静に状況を見極め、必要あらばブレーキをもかける、ということが不可能になってしまう。
 同時に、政府はなぜこんなことを公言するのだろう?とも思った。いくら民主主義だ、情報公開だといっても、戦略的な機密事項というのは必ず存在する。このような洗脳工作について、いくら「研究に着手」しただけだとは言っても、公にしてしまっていいとは思えない。
 同じ日、安全保障関連三文書の骨子案が自民党の会議にかけられ、そのおよその内容が明らかになった。新聞報道を見ながら、事態が必要以上にエスカレートしていきそうな不安を感じた。これだから戦争はまずいのだ。予防は必ず過剰になる上、ひとたび戦争が始まれば更に暴走する。
 先日私は、政府が想定している敵基地攻撃能力について、「現実に目を向ければ、今、日本が選択しようとしている方向性は正しい」としつつも、「それは際限のない軍拡競争に参加することでしかない。その先に何があるかと言えば、『一触即発』が実際に起こってしまった時の地球の破滅である」と書き、その上で、「私は自分の態度が決められない。それでもあえて、と問われれば、せいぜい現状維持かなぁ?」というあやふやな結論を書いた。私はその後の報道を見ながら、自分の心が、たとえ何を失っても、防衛力を小さくしていった方がいいのではないか、という方向に傾きつつあるのを感じている。
 ところで、政府はとりあえず防衛費を1.5倍、43兆円に増やすと言っている。すっかり既定路線になっているような勢いだ。当然、この膨大なお金を調達する方法についての議論も盛んである。首相は、個人の所得税は増やさないが、何かしらの増税によってまかなうことは必要だと言っている。自民党内には増税慎重論が多いようで、これは経済に水を差すのはよくないという判断だけではなく、国民からの批判(次の選挙で負ける)を恐れてのことであろう。
 私は絶対に増税すべきだと思っている。しかも、復興特別税をスライドさせるとか、法人税を増やすとかではなく、消費税や所得税など、国民の財布を直撃する税金を増やすのがいいと思う。そうしなければ、防衛力の強化も、実際に戦争が始まらない限りはどこかの誰かの話で、まじめに我が事として考えたりしないからである。やるなら、税金を多く納めてでも断固として防衛力を強化する、という国民の意志(覚悟)を問い、責任を直接国民に求めるべきなのだ。それで国民が「NO」と言うなら、防衛費の増額などすべきではないのだ。
 ところで、防衛省で研究を始めるとか言う世論誘導の手法を使えば、防衛費増額のための増税に国民がこぞって賛成するように誘導できるのではないのかな?あ、そんなことよりも、現政権にしてみれば、政権支持率を上げることの方が先かな?・・・こんなことを政府が自由自在にできるようになったら・・・もはや民主主義国家もおしまい。戦争以前の話だ。