毎日新聞は月曜日、朝日新聞は火曜日に、それぞれの社が独自に行った世論調査の結果を発表した。防衛体制の変更に関して、ちょっとその数字を見てみよう。
反撃能力を保有することについて
(毎日)賛成59% 反対27% 分からない13%
(朝日) 56% 38%
防衛費の大幅増について
(毎日)賛成48% 反対41% 分からない10%
(朝日) 46% 48%
防衛費を増やすために増税することについて
(毎日)賛成23% 反対69% 分からない8%
(朝日) 29% 66%
防衛費を増やすために国債を発行することについて
(毎日)賛成33% 反対52% 分からない15%
(朝日) 27% 67%
防衛費を増やすために社会保障費などの政策経費を削ることについて
(毎日)賛成20% 反対73% 分からない8%
(朝日)質問なし
当然のこと、朝日と毎日では質問の文言が違うし、毎日が設定してる「分からない」という選択肢が朝日にはないなど、まったく同列に比較できないという問題はあるのだが、だいたいの傾向については把握可能で、しかも、両紙とも共通している。
簡単に言ってしまえば、防衛力の増強、敵基地反撃能力の保有については賛成する人が多いものの、そのために防衛費を増やすことについては賛否が半ばし、更に増税や政府サービスの低下が発生することは反対、ということである。予想通りの結果だ。一言で言えば、なんとも虫のいい要求である。防衛力を大幅に増強しつつ、防衛費を増やさず、増税も国債発行も社会保障・社会サービスの削減もしないということが可能なら、完全にマジックの世界である。公務員の給与や公共事業(インフラ整備)費の大幅削減ならいいのだろうか?それらは間接的に大きな負の経済効果を生む。上の調査結果に表れているような虫のいい考え方をする人たちが、それを許容するとは思えない。あらゆる利益だけを得たくて、その代償は認めない、ということなのだ。
ところで、防衛力増強、中でも敵基地攻撃能力の是非について最近あれこれと考えていて、日に日に変だぞと思うようになっていることがある。気付いてしまえば、「何を今更」と笑われそうなくらい自明のことだ。
それは、防衛力の大幅増強、敵基地攻撃能力の整備が、まだ国会で一切議論される前から、既に決定事項であるかのように語られ、受け止めてしまっていることについてである。戦後日本の転換点とも言うべき大問題で、しかも大きな予算措置を伴う問題である。国会での議論はもとより、時折言われているように、衆議院の解散・総選挙というのもこのような時にこそ使用すべき制度なのではないか、と思うほどだ。しかしながら、首相の談話、更には閣議決定によって、私たちはそれが既決事項であるかのように認識するとすれば恐ろしいことだ。政府のやり方だけではなく、私たちの意識が恐ろしいのである。
これらの問題は、年が明けてから開かれる通常国会で徹底的に議論されなければならない。その場合、防衛力の増強と、予算の確保は必ずセットだ。お金を出す気がないのなら、防衛力の強化はあり得ない。虫のいいことを考えてはいけないのである。