アナログの終焉・・・ファックス原稿用紙のこと

 今年、1年生のクラス担任になってから、例のごとく学級通信を出し始めたのだが、当初は以前の様式とほとんど同じで、手書きではないものを発行していた(→参考記事)。ところが、いろいろと感じるところ、思うところあって、5月末からは手書きに戻した。以前と違って、どっちにしても反応甚だよろしくない。それでも、学級通信は自分で何をしているのか、自分が何を考えているのか確かめるために書いているようなところがあるので、生徒が読むか読まないかとは関係なく続けようと思っていた(→参考記事)。
 そんな私に危機が訪れた。原稿用紙の枯渇、である。
 私は学級通信を書くのに、4㎜方眼のファックス原稿用紙というものを使っている。薄い青でマス目が書かれていて、コピー機印刷機で印刷する時には、その罫線は写らない。学級通信に限らず、手書きプリントにはこれが欠かせない。
 ところが、なにしろ何でもデジタルのご時世である。こんな原稿用紙を使う人は私以外におらず、学校でも普通は常備していない。前任校では、私のまねをして手書き学級通信を書こうというたくましい若者がいたので、2人で事務室にお願いをして、100枚の束を2つ買ってもらった。現任校に異動して来る時、残っていた40枚ほどを持って来てしまった。
 「てしまった」はよくない。悪いことをしているみたいだ。事務室に、「どうせ他の人は使わないだろうから持って行っていい?」と尋ねたところ、「同じ県立高校だし、仕事に使うならいいよ」と言われたから持って来たのである。先週、それが2枚だけになってしまったことに気付いた。
 わざわざ私だけのために、事務室で買ってもらうのは申し訳ないと、自分の少数派ぶりからいつになく弱気になり、学校に出入りしている文房具店にポケットマネーを持って買いに行ったら、「店にないので取り寄せだ」と言う。取り寄せを依頼して帰って来たら、2日後に電話があり、「5冊単位でしか販売できないそうだ」と言われた。5冊で500枚、7500円にもなる。いくらなんでもこれはバカバカしいなぁ、と思い、キャンセルした。この時点で、代わりにどうしようという当てはない。
 仕方がないので、現任校の事務室に相談に行ったら、探してあげようと言われた。そしてそれから5日ほど経った今日、事務のOさんが、わざわざ職員室の私の所に、1冊=100枚を届けてくれた。アジア原紙という会社の4㎜方眼、PPCファックス原稿用紙、というものである。Oさんは、「平居先生、これで最後ね。あともう買わないから・・・」とおっしゃる。
 どこで手に入れたのか尋ねると、ASKUL(アスクル)で買えたのだそうだ。調べてみると、わずか1155円で、しかも法人会員になっていると送料は無料だ。決して高いものには思えないが、なぜ「これで最後」なのだろう・・・???
 いくらアンチデジタルの平居といえども、今やたいていの印刷物をPCで作る。ほとんど唯一生き残った手書きが学級通信だ。手書き文字には手書きにしかない情報がたくさん含まれている。決して古いと否定できない価値があると思うが、他の人にとってはそうでもないらしい。
 手書きを維持するのも、物質的に難しい世の中になってきた。アナログには生きる余地などないのだ。ともかく、今日100枚を入手したが、それは、仮に今のクラスを3年間持ち上がったとして、ギリギリ間に合うくらいだろう。2年半後に卒業生を出し、そのタイミングで学級通信用の原稿用紙がなくなり、私の教員人生も終わり、そして人生そのものも終われば・・・一つの時代の終わりとして、なんだかすっきりするような気がしてきた。