遠景と近景

(2023年12月1日「担任のお話」№27より)


 早くも師走。よく「先生が走り回るくらい忙しい月」だと説明されるが、おそらくそれはウソ。ただ、今月をもって今年は終了。早いっ!!と驚く事実は変わらない。

【「始業」の意味を考えよう・・・】

 私が「会社では通用しないぞ」と言う機会が、最近増えているような気がする。それが最も多いのは、朝のSHRだ。8:35、始業の鐘が鳴った時に・・・

・ネクタイをしていない(または、結んでいる途中)。
スマホをいじっている(なかなかしまおうとしない)。
・「来てるんだからいいでしょ」と言わんばかりに、机上に荷物を置いたままトイレなどに行っている(戻ってきても何も言わない)

 更に、これは諸君ではなく親の問題なのだが(諸君より親の方が早く家を出るため、どうしようもない場合もある)・・・

・遅刻、欠席の連絡が8:35以降に入る(ひどい時には午後になってから!いやいや、やむを得ず私が電話する場合もある)

 どちらも、会社では絶対にあり得ない。「始業」というのは、文字通り、仕事を始める時間のことだ。全ての準備はその前に終わっているのが当たり前である。人の穴埋めの段取りをする人のことを考えれば、遅刻・欠席連絡は、出来る限り早くするべきだ。    

 この学校では、過半数の生徒が就職する。様々な場面で「会社だったら」という基準で是非の判断が行われるのは、社会に出る準備としても当然のことだろう。いやいや、「始業」の意味は、会社だけではなく、あらゆる組織で同様のはずだ。「始業とは何か?」という原点から、自分たちの行動を点検してみて欲しい。まずはそれが、後期後半の課題である。


裏面:11月14日毎日新聞「東北各県自治体に『なぜ殺す』 クマ駆除抗議に困惑」を貼り付け。
平居コメント:宮城県ではまだ人が死ぬような深刻な被害は出ていないけれど、今年はクマに関する報道に接する機会が本当に多い。人間の活動が原因で自然環境が激変し、餌が少なくなった結果として、クマはやむを得ず人里に下りてくるわけだから、「トラブル」を起こしたとして射殺されたり、山に戻されたりするクマは確かに気の毒だ。
 ところで、どうしてこの記事を紹介するか分かるよね?今回の考査範囲だった関礼子「自然をめぐる合意の設計(デザイン)」に出てくるような「遠景(都市部)」と「近景(田舎)」のトラブルは、現実の問題だということだ。
 関礼子という作者は、そのようなトラブルを、自然保護に関する法律を厳守するという融通の利かない方法ではなく、暗黙の了解とも言うべきものを探し出すことで克服しようと提案していたのだが、正直言って、曖昧、漠然とし過ぎていて、少なくとも私には、実際にそれで問題が解決しそうな気はしない。
 一方、このような記事は「遠景」の人たちの目にも触れる。お互いの認識や考え方にずれがあることは、「知らない」が原因である場合が多いだろう。だとすれば「知らせる」というメディアの役割は大きい。この記事を読めば、「近景」の人たちの事情や思いも分かってくる。「遠景」の人たちはこれを読んでどう思うのだろうか?

 

*これら以外の記事は省略。