逃げてはいけない



 今週の月曜日で期末考査が終わり、昨日はせっせと答案返却をして、今日からいよいよ後期の授業である。最初の授業は、よりによって、さっぱりうまくいかない因縁の(?)某クラスである。

 このクラスは、生徒間の私語が多く、私との会話(特に授業の真髄とも言える一問一答)は一切成り立たず、いささか粗野な生徒が多く、それでいて筆記試験には比較的強く、私も含めた多くの教員から、伸びしろのある(つまり、潜在的能力が高い)生徒がそろっているクラスと目されている、実に不思議なクラスである。もっとも、一番うまくいっていないのは私らしい。

 あれこれ理由を考えてみるに、私の側にも彼らの側にもいろいろとあるのだが、とりあえず自分のことは棚に上げると、何が悪いって、彼らが、偉そうな口を利きながら、姿勢としては「逃げ」ていることが悪い。その典型が、私とは対決せずに、自分達同士の私語に逃げ込む姿勢だ。

 ただただ徒労感ばかり強いので、あきらめ、適当に手を抜いてごまかしてしまおうか、という気も無くはなかったが、もちろん、そうなると私も「同じ穴の狢(むじな)」になってしまうわけだから、そうはいかない。真面目な生徒への迷惑もあるし、知らん顔をして淡々と授業を始めるのもよくないと思い、ひとしきり「口上」を述べた。前任校でも、同様の話(説教)はした記憶がある。ということは、けっこう普遍的なことなのだろうから、記念に(?)概要を書いておこう。

「考査の点数が悪かったことについてあれこれとグチが聞こえてくる。しかし、そのグチは、自分以外に責任を求めるものばかりだ。それで、諸君が向上するだろうか?諸君に、国語の授業に求めるものがあるのかないのか知らない。しかし、私は諸君に、社会に出てから不都合にならないだけの、しっかりした読み書きの能力をつけて欲しいと思って授業に来ている。勉強から、そして私から逃げるな。グチと言い訳はすべて逃げだ。逃げることは人間として最も悪い。逃げなければ、たとえテストの点数が上がらなくても、何かを得ることができるが、逃げれば何も手に入らない。」

 他のこともいろいろと話したし、もちろん、こんな言葉で語ったわけではないけれど、まあここが話の中心だっただろう。彼らが理解したのかどうか知らない。このクラスの担任で私の敬愛するK教諭も、口癖のように、「自分は彼らと戦っていくしかないんです」とよく言っている。私も、まったくそれは大切な姿勢だなぁ、と思う。この学校に来て、そしてこのクラスに出入りして、既に忘れかけていたこの人間と人間が対決することの大切さを再認識したことは、もしかすると感謝すべき事かも知れない。ちょっと(?)疲れるのだけれど・・・。