本当にひどい話だ

 自民党の総裁選挙。どんな報道を見ていても同じ事を言っていて、私も同じ事を言うには恥ずかしさを覚えるほどなのだが、やはり言っておこう。あまりにもひどすぎる。
 意外に思われるかも知れないが、総裁選挙に立候補する人達が、総裁として何をするのかを説明する前に、誰が総裁になるかほぼ決まってしまっているということ自体を批判する気はあまりない。間近で見ている人間がその人を総合的に判断する、ということはあり得るからだ。同じことを言っていても、信用できる人と信用できない人というのがいて、それは遠くの人間にはなかなか見えにくい。だが、それにしても、今回の総裁選挙があまりにもお粗末なのは、何が正しいかではなく、どうするのが得かという卑しい根性が露骨に見えるからだ。
 誰が総裁になるかある程度見えてきてしまうと、その人に嫌われることが怖い、気に入られることで厚遇されたい、という意識によって、その人に我も我もと群がるようになる。党員投票をしないという決定だって、しない方が円満に総裁が決まる、しないという選択が有利になる人に取り入っておきたい、という思いの表れであろう。身の毛のよだつような汚い話だ。
 自民党が、これだけ多くのメディアで同じような批判を受けながら、そのようなやり方をあえてするというのは、そんなやり方をしても選挙で負けたりしないという自信があるからだ。こういうのを「国民をなめる」と言うが、これまた、同様のことが過去に何度もあったから、自民党が「今回も大丈夫」と思うだけの話であり、やはり悪いのは国民だということになる。過去の例を挙げるまでもない。例えば・・・
 「あなたは次の首相に誰がふさわしいと思いますか?」
 石破 34.3%  菅 14.3%  河野 13.6%
 菅 38%  石破 25%  岸田 5% それ以外 28%
 同じ質問に対して、上段は8月29、30日に共同通信が行った世論調査、下段は9月2、3日に朝日新聞が行ったもの。実施主体が違うので完全に公正な比較はできないが、対象人数は違えど、どちらも同じ方法によるものなので、仮に主体が同じだったとしても、同じような結果になるだろう。後者は総裁選の立候補者が3人となったことを受けて、河野や小泉、野田といった人々の名前を挙げずに行っているので、「それ以外」に含まれる人の中には、岸田氏よりも多くの支持を集めている人がいるかも知れない。だが、おそらくそれもどうでもいいことだ。このわずか数日の変化は、菅氏の選出が確実視されることで、世論もそれに同調したことを表す。この間に、彼らに関する様々な情報が有権者に新たに提供されたということはない。だとすれば、結果が見えてくると、人々がなんとなくその気になってしまう、よほどのマイナスポイントがなければ、積極的に否定はしないという主体性のなさを物語っているだろう。
 更に、ほとんどの県で党員による予備投票を行うことを決定した中で、自民党秋田県連は、「県出身者初の総理という夢を実現させようと」予備選挙を実施せず、3票を菅氏に入れることを決めたという。首相はおろか、普通の国会議員でさえ「全国民を代表する」存在であるべきなのに、である(→参考記事)。党内問題だから許される、ということになるのだろうか?
 今私は「よほどのマイナスポイントがなければ」と書いたけれども、私の感覚では十分に「よほどのマイナスポイント」のある人だ。なにしろ菅氏は、安倍政権を長期間にわたって支えてきた人である。しかも、連日の記者会見でモリカケ問題その他をはぐらかし通し、不都合な質問をする記者は遠ざける、ということをやり続けてきた。世論調査の対象となった人は、そんなことを意識して回答しただろうか?
 菅氏が自民党総裁=首相になったとして、立派な政策が実行されるどころか、人間としての基本中の基本である「誠実・丁寧」も実現しないだろう。自分を押し立ててくれた各派閥への配慮も忘れるわけにはいかない。おそらくそれは、彼にとって「国民」よりも大切な存在だ。「とりあえず任期は一年」を心の支えに、じっと我慢しているしかないのだろうか。本当にひどい話だ。