コロナよりも学術会議

 宮城県は、「蔓延防止等重点措置」が11日で解除されそうだ。確かに、3月末には1日当たり感染者数が200人に達したが、最近は50人未満、たいていは30人前後になっているから、「落ち着いた」とは言えるのだろう。ぶっちぎり全国トップ(=ワースト)だった10万人当たりの感染者数も、この数日は下から数えて10番以内だ。この浮沈は恐ろしい。1ヶ月後にはどうなっているか分からない、ということだからである。少ないとは言っても、これだけ火種があれば、緩めた瞬間に再燃というのは目に見えている。
 全国的にはかなり厳しい状況が続いている。6都道府県では「緊急事態宣言」の延長が発表された。政府の対応にもかなり多くの批判が為されているようである。
 私は現政権が大嫌いなのであるが、それでも、コロナ対策で責めるのは少し気の毒だ。以前も一度書いたことがあるのだが(→こちら)、政府が何をするかと関係なく、これが「危機」だと感じられるのであれば、国民1人1人にできることがたくさんあるからである。ゴールデンウィークの各地の状況を見ていても、4月から比べれば若干人出は減っているものの、場所によっては混雑していたようだし、大都市中心部でも、昨年の同じ日に比べると2倍以上の人出になっているところが少なくない。私が政権担当者だったら、「勝手なことやっていて、感染者が増えれば政府を批判するなんて、いい加減にしろよ!!」と声を荒げたくなるところである。
 もっとも、私は、コロナ対策も1年を過ぎて、「疎」とか「清潔」とか「表情の見えない生活」とかを続けていれば、弊害の方が絶対大きくなるので、少々人が死んでもあきらめて規制を緩和した方がいい、というのが基本的な考え方である(→参考記事)。弊害というのは、人間関係の形成であったり、特に若者、更に小学校入学前後くらいの子どもたちの世界観、人間観の形成であったり、免疫力であったりが大きなダメージを受けるだろう、ということである。清潔すぎる環境のせいでアトピーやアレルギーが急増しているという指摘は、もう言われ始めて久しい。清潔すぎる環境は、人間を脆弱にするのである。
 「少々人が死んでも」とは聞き捨てならぬ、と目くじらを立てる人もいるだろう。昨日は過去最高、1日で146人もの死者が出た。しかし、である。コロナなんかなくても、約1億2千万人の人口の日本では、毎日3800人くらいの死者が出るのである。連日「何人死んだ」と報道されるのを見ていると、コロナがなければ死亡者はゼロみたいだ。146人が本当に大変な数字かどうかは、冷静な考察が必要だ。
 5月3日、尾身茂氏のインタビューが「文春オンライン」で流れた。その中で尾身氏は、2020年の死亡者数が、前年を約9000人下回ったこと、高齢化の中で、毎年2万人くらい死亡者が増えていたことを思うと、それは約3万人の減少に相当するということ、原因としては、感染症対策がインフルエンザや肺炎の減少に結びついたと考えられることなどを述べている。コロナによる死亡者に80歳を超える高齢者が多いこと、インフルエンザで死ぬ人が毎年だいたい1万人いると言われていることを思うと、(今のところ)コロナによる死亡者数はまったく問題とするに足りないのである。ちなみにコロナによる死亡者数が1万を超えたのは、流行が始まってから1年以上過ぎた先月26日のことである。過去1年間、インフルエンザの流行はほぼ(全く?)なかったわけだから、この1年は、従来のインフルエンザによる死亡者がコロナに置き換わっただけである。
 先日テレビを見ていたら、ある専門家が、「国民に、誰でも感染する危険があることをもっと分かってもらわないと・・・」と述べていた。「自分だけはかからない」と思っているから、不要不急の外出をしたり、マスクもせずに飲食をしたりする、と言いたいようである。私は違うのではないか?と思った。みんな「自分だけはかからない」と思っているのではなく、「かかってもかまわない」もしくは「かかっても仕方がない」と思っているのだ。それが、全年齢層を合わせて致死率1.5%、しかも死亡者の大半が80歳以上であることに対する認識、というものだろう。ヨーロッパ中世に流行したペストのような感染力、致死率であれば、専門家や政治家が大声で何かを言わなくても、誰だって真っ青になって家に閉じこもる。
 もっとも、ウイルスの常で、後から後から変異して性質が変わるし、その結果、感染率も致死率もどう変化するか分からない。その先の見えなさが対応の難しいところだ。
 それでもやはり、感染者は出してはならない、増やしてはならないというのなら、今の対応は緊張感に欠けていすぎる。「政府が」ではなく、「国民が」だ。一方、それは無理な話だ、あるいは、対策の弊害が大きすぎるというのなら、政府ばかり責めたりせずに、「感染を受け入れましょう」というようなことも言わなければならない。後者の場合、医療現場の逼迫はどうする?・・・それとて、あきらめるしかないではないか。基本は酸素吸入まで。それ以上の治療は、できる範囲で若い人から順。それで仕方がない。
 政府のやっていることとしては、コロナ対応のゴタゴタ(後手後手・・・笑)よりも、学術会議議員の任命問題の方がはるかに罪が重い。