先週水曜日の河北新報第1面トップ記事は、宮城県における書店の現状についてのものだった。見出しは「電子書籍など普及 厳しさ増す経営環境」「仙台圏書店 生き残りへ差別化に力」である。まぁ、これで内容についてだいたいの想像は付くであろう。
なにしろ、私が小学校時代には仙台市内の大きな本屋さんの代名詞であった「金港堂」が、4月末に閉店した。この10年あまり、書店を取り巻く状況の厳しさはよく話題になる。今回の記事の見出しでは「電子書籍など」がやり玉に挙がっているが、ネットに頼って紙の本を手に取らないとか、本を買うときは宅配便で取り寄せるとかいうことの方が、電子書籍なんかより何倍もダメージが大きいだろうと思う。
全国に目を転じれば、書店ゼロの自治体が27.7%に増加し、それが過半数を超えた県も3県あるらしい。書店が生き残っていても、置いている本の内容が変化しているということもあるだろう。書籍市場はこの30年で6割減ったというからひどい。ネット、特にスマホの普及によって、ますます子どもが本を読まない、などというのは、「悪貨は良貨を駆逐する」以外の何ものでもない。いいものを残すには膨大なエネルギーが必要なのに、悪いものがはびこるのはとても簡単だ。
これが偶然なのかどうかは知らないが、同じ新聞の第25面(いわゆる三面記事)には、宮城県教育委員会が「アマゾンビジネス」を導入することにしたという記事が出ている。今年2月に、公費で何かを買った際、教員個人がポイントを得ることが問題になった(→関連記事)。それを解決させるために、「アマゾンビジネス」という法人向けサービスに各学校が登録し、事務室のPCからネット購入をすると、ポイントが学校のものになるという仕組みらしい。導入するかどうかは各校の判断であって、県が一律に強制するものではないという。
記事では会社名が書かれていないが、「アマゾンビジネス」というからには、あのAmazonなのだろう。
県内の書店が苦境に立たされている状況下で、県が積極的にアマゾンからの購入を後押しするようなやり方をするのは間違っている。後から後から道路を立派にし、温暖化の時代に車社会を加速させておいて、JRの経営が思わしくない、路線の存続をどうするかなどという議論をしているのと似ているような気がする。
私は、多少のデメリットがあっても、地元の商店から買うべきだと思う派である。まして、県であれ市町村であれ、地元自治体が運営している学校であれば、なおのこと地元の店を大切にしてほしい。これは、地元の店に対する同情とか哀れみでは決してない。
特定の大企業だけが利益を上げる仕組みにしてしまえば、地方の富は吸い取られるばかりである。地方の衰退に拍車がかかる。ネット通販の環境負荷は、もっと真剣に考えられてよい。顔の見える業者とのやりとりがあると、よく分からないことについて相談に乗ってもらえる。そもそも、教員が公私ともにネット通販に頼るようになると、生徒にもそれを勧めるようなことが起きてくる。「ネットで買え」と言うのではなく、さも当たり前のように「私はネットで買ったよ」と言うだけでも、影響力は発生するのである。
書店の衰退は文化の衰退に直結するだろう。まぁ、県教委の見識なんてその程度のものだ、ということである。