呑兵衛大集結

 昨晩は、珍しく妻に誘われ、市内のマニアックな(?失礼)酒店である四釜(しかま)酒店が主催する、「名門酒を味わう会」というのに参加した。会場は石巻グランドホテルの大広間。参加費がけっこう高い(1人6000円!!)こともあって、私は今まで行ったことがなかったのだが、年に2回のペースでかなり昔から行われている伝統行事なのだそうな。
 開会の30分ほど前に会場のホテルに着くと、人がぞろぞろ入っていく様子が見える。「え?これ本当に《名門酒を味わう会》に参加する人たちなのかな?」と半信半疑だったが、確かに、その人たちのほとんどは私と同じく2階の大広間に向かっていた。
 受付で酒肴セットと、プラスチック製のおちょこ4個を受け取って会場に入ると、もうほとんど満員だ。テーブルはあるが椅子がない立食形式。会場の真ん中に蔵元のブースがあって、既にウェルカムドリンクなるものを振る舞っている。ブースを出している蔵元は11(南は千葉県から北は秋田県まで)で、それらがのべ50種類以上の酒を持って集まっている。渡されたパンフレットで紹介されている酒は52種類だが、それぞれの蔵が「隠し酒」を持ってきているらしいので、おそらく60種類を超える酒が用意されていたのだろう。
 それにしてもびっくりである。日曜日の夜で、しかも普通の居酒屋で一晩飲むくらいの参加費なのに、この人の多さは何なんだ、と思った。世の中にはこんなに「呑兵衛(のんべえ)」がいるのか、と感動を覚えるほどだった。約300人だそうである。そして更に意外だったのは、男女と年齢のバランスがとてもよく取れていたことである。女性も、若い人も多い。世界的に日本酒の評価が高いという話はよく聞くが、一方、職場なんかを見ていても、最近は「飲みません」という若者が多いので、若い人ほど酒を飲まないという傾向があるのではないか?女性はカクテル系が多く、日本酒はやっぱり「おじさんの酒」なのではないか?と少し思っていたのだ。少なくとも、昨晩の会について言えば、そんな気配は微塵もなかった。男も女も、老いも若きも「やっぱり酒は日本酒」という雰囲気である。熱気がすごい。
 日本酒ファンの一人として、いろいろな酒を味わえるのは楽しいが、最初から最後までアルコール度数15%前後の日本酒ばかりを飲み続けるのは少しつらい。しかも、昨年もこの時期に少し書いたとおり(→こちら)、近年の日本酒の質の高さは驚くほどであって、少なくとも純米酒であれば、好き嫌いは多少あるにしても、優劣などほとんどつけようがないほどだ。最初のうちは、蔵元ごと、銘柄ごとの違いをあれこれ考えていたものの、すぐにどうでもよくなってしまい、酔い潰れるのを多少心配しつつ、あれも飲みたい、これも飲みたいと、盃を持ってうろつき回っていた。
 抽選会があった。いい酒が当たればいいなぁ、と思っていたが、私は酒器が当たった。残念ながら、どこかの酒屋が初売りの景品で配っているような、平凡なとっくりとぐい吞みのセットであった。・・・たぶん使わないな・・・。ちなみに、妻は外れ。
 四釜酒店は、「伯楽星」や「綿屋」といった入手しにくい宮城県内の銘酒を常に置いていて、それらを定価販売しているので、私も時々行く店である。「日本名門酒会」加盟店なのだが、聞けば、かつては市内に何軒かあった加盟店が、現在は1軒だけになってしまったそうだ。退会するということは、何かしらの義務や負担があるということなのだろう。それが何なのか?社長に聞いてみようと思っていたのだが、ごった返していて忙しそうだったので、聞かずに帰ってきてしまった。今度、店に行った時に聞いてみよう。
 とにかく、日本酒が、あらゆる階層の多くの人に熱狂的に支持されていることが感じられたことはよかった。次回、秋の会は、宮城県内の酒蔵の酒だけを扱うのだそうだ。今回飲み比べをしていても、宮城県の酒は特に品質が高いと感じる。しかし、参加費で「伯楽星」や「綿屋」、「日高見」の特別純米酒が2升買えるわけだから、安易に「よし、また来るぞ」とはいかない。 どうしようかなぁ。