文明

再論『人新世の「資本論」』(2)

著者は政治家は期待できないと言っている。政治家は、資本主義の枠にどっぷりと浸っているだけでなく、「次の選挙より先のことを考えることができない生き物」だからである。環境問題克服のためにまず求められるのは、ある程度長期的な視野である。 しかし、…

再論『人新世の「資本論」』(1)

先日、斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)を私は絶賛した(→こちら)。人から借りた本を3回読んでよれよれにして返し、その後、やっぱり欲しいなと思って買ってきて、また読んだ。 ところが、4回読むうちに、当初の感動は薄れ、いろいろと問題…

GIGAスクール構想に対する教員の態度

今日は、仙台で教職員組合の勉強会に参加していた。基調講演とも言うべきお話のタイトルは、「GIGAスクール構想・ICT教育を巡る情勢と教職員組合の役割」であった。お話の後、意見交換が行われた。いろいろな人が話すのを聞きながら、ちょっとまずい…

斎藤幸平『人新世の「資本論」』

この2日間、職場の同僚に勧められて斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書、2020年)という本を読んでいた。これはびっくり。環境問題がいかに深刻な人類的課題であるかから始まって、資本主義が環境問題克服と絶対に矛盾する理由、それを克服す…

雄勝の「壁」

3連休の中日、ちょっとした事情があって、家族で石巻市雄勝に行った。震災後2回目であるが、前回は確か2011年9月(震災後半年)だったから、10年ぶり以上ということになる。巨大な防潮堤建設に関するニュースや記事を見ては、「げんなり」と言うか…

植松氏へのエール

抱えていた論文を1本出して、一息ついているということは、半月ほど前に書いた。その後も、のんびりと、懸案だった本を読んだり、改めて聴いてみたいと思った音楽を聴いたりしている。ただし、PCの調子があまりにも悪いので、ここに字を書くことがひどく…

「楽」や「便利」と引き替えに

(1月11日「学年主任だより№31」より①) *ブログの読者の方には、1月4日の記事と内容が重なっていてごめんなさい。 卒業を迎える諸君にとって特に重要な意味を持つ新しい年が始まった。冬休み中、事故の連絡等は受けていないので、充実した楽しい冬…

環境についての正直な議論

先週の金曜日、「文春オンライン」にアップされたトヨタ自動車社長・豊田章男氏のインタビュー記事を、とても興味深く読んだ。 氏はそこで、トヨタが生産する全車をEV(電気自動車)化しない理由を語っている。それは次の3点だ。1)EVに必要な蓄電池を…

次世代の危機感

(11月30日「学年主任だより№27」より)*なんだか過去の記事との重複部分が多すぎて、ここに公表するのが申し訳ないような内容なのだが、一応何かのために載せておこう。 もはや先々々週となる13日(土)、COP26(国連気候変動枠組み条約第2…

環境問題の議論をするために

先々週の土曜日、COP26が閉会した。本来は金曜日閉会の予定であったが、石炭火力発電所をどうするかなどの文言調整が難航した結果、1日延長となった。世界120ヶ国から非常に高い地位にある人を含めて、25000人以上が集まった巨大会議である。…

喜んでいる場合ではない・・・真鍋氏のノーベル賞

アメリカ国籍の元(?)日本人・真鍋叔郎氏が、ノーベル物理学賞を受賞するという。そもそも、ノーベル賞というものは世界人類の幸福実現に貢献した人に与えられるはずの賞なので、それが何人であるかはどうでもいい話だ。日本人が受賞したからと言って、私…

改革ではなく革命を

水曜日の河北新報に、「命脅かす気候危機」という巨大な見出しの記事が出た。1面の3分の2にも及ぶ大きな記事である。それによれば、9月6日に、世界の220を超える医学や看護学の専門誌が、温暖化とその影響についての共同論説記事を掲載したらしい。…

パラリンピックのことなど

(9月7日付け「学年主任だより№17」より①) *今回は裏だけでなく、表にも新聞記事二つ。 (9月3日付け河北新報より、西脇久夫氏の訃報貼り付け) この記事を見て、「これ誰?」という人は、塩高生ではない。諸君の大先輩(旧男子高の卒業生)、かつ現…

「戦争の教訓」と温暖化

(8月24日付「学年主任だより」№16より) なんだか長い夏休みだったような気がする。就職を始めとする進路決定についての様々な作業、オリンピック、コロナの感染爆発・・・と、落ち着かない要素が多かったからだろう。 東キャンパスは知らず、幸い、2…

身の毛のよだつ話

北海道で消化したスケジュールは次のとおりであった。(==は交通機関、--は友人の車、・・・は徒歩) 7月22日:仙台港19:40=(太平洋フェリー)7月23日:=11:00苫小牧港・・・苫小牧駅13:26=(室蘭本線・普通)=14:03追分1…

過剰なる熱中症対策

日曜日に梅雨明けした宮城県は、その後すっかり夏らしくなり、気温も上がった。いつ明けたのか分からないような梅雨よりもメリハリがあっていいなあ、やはり夏は夏らしくなければ・・・などと思っているのだが、なんだか困ったことが起こってきた。「困った…

青いアジサイ、ピンクのアジサイ

(7月14日「学年だより№14」より①)*旧「学年だより」から通算で第100号となります。 週間予報によれば、宮城県は今後晴れが続く。今週末からは気温も30℃を超えるとあって、なんだか梅雨が明けそうな勢いだ。通学時のことを考えると雨は嫌なもの…

青春デンデケデケデケ

昨日は、我が家の近所のライブハウス「ラ・ストラーダ」で月に一度開かれる、音楽映画会であった。今回は「青春デンデケデケデケ」(大林宣彦監督、1992年。舞台は香川県観音寺市)。ネットで見ることができる観音寺市の広報誌(2020年10月号)に…

終末へ向けての暴走

今週の火曜日、政府が「骨太方針」の骨子案なるものを経済財政諮問会議に提示した。基本的テーマは「新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会の展望」で、4つある「新たな成長の源泉」の一つとして「官民挙げたデジタル化の加速」というの…

エスカレーターと法規制(2)

実際に、以前ならマナーや常識で対処できていたことが、法による規制を必要とするようになっているかどうか、その是非は確かめられない。ただ漠然とした印象では、おそらくその通りだろう、と思う。では、それが正しいとした上で、なぜだろうか? 今のような…

脳天気なるSDGs

(4月28日付け「学年主任だより№4」より②) 【悩ましいSDGs・・・難しいのは「持続可能」】 時間があまりにも限られていたこともあり、先週のSDGs講演会は、おそらく諸君にとって決して分かりやすいものではなかっただろう。今年の普通科「総合…

憧れの塩高生

ブログの読者の方には、同じようなネタの記事が続いて申し訳ありません。 (2月24日付け「学年だより№82」より①) 塩釜神社の「河津桜」のつぼみの膨らみを毎朝観察しながら、そろそろかな?と思っていたら、22日の朝日新聞に出た。何が?河津桜満開…

物事は自分の希望するように動くと考える

朝日新聞の土曜版「be」に「ののちゃんのDO科学」というコーナーがある。科学に関する読者の質問に答えるというもので、とても平易、ほとんど全ての漢字にルビが付いているということもあって、私が受け持っている生徒に読ませるには手頃かなと思い、「…

ごみ禍

おでんの季節である。おでんの種を大量に買って、毎日少しずつ足しながら食べると、飽きることもなく、ほとんど1週間それだけで済んでしまうので、「主夫」である私にとって甚だ好都合。 昨年までは、近くのスーパーに「おでんバイキング(おでん種のバラ売…

学校の原点に立ち返る3ヶ月

(12月1日付け「学年だより№71」より①) 今日から師走。春のコロナ休校の影響で冬休みが短縮になったとは言え、それでもあと3週間あまりで「今年」が終わる。 さて、今週末には「はやぶさ2」のカプセルが地球に戻ってくる。昨年2月と7月に、小惑星…

〈Marine Traffic〉の喜びと憂鬱

1週間以上何も書かずにいた。本当に久しぶりで、「学年だより」も出さなかった。修学旅行ロスもあったかも知れない。そして何より、考査期間中は本当に忙しいのである。 何しろ3種類、のべ240枚の答案を採点しなければならない。ということは、直前に他…

私も自宅待機!

新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない。ただ、修学旅行中止の決断に関わった私は、毎日、奈良、三重でも多くの感染者が出ていることを確認しては胸をなで下ろしている、というのが正直なところだ。「胸をなで下ろしている」というのは、安心の表現であ…

今の技術、昔の技術

(10月8日付け「学年だより№64」より①) 先週の「十五夜」は本当にいい月を見ることが出来た。10月に入り、塩釜神社では早くも「モミジのドラマ」(→こちら)が始まった。衣替えにもなったし、秋の深まりが感じられる。サンマの記録的不漁(←知ってる…

嘱託殺人と言うけれど・・・

一昨日、京都のALS患者を死亡させたとして、2人の医師が逮捕された。そのうち一人は、私の母が住む実家のすぐ近所でクリニックを開業している医師である。 報道によれば、ALSを患って寝たきりの女性が、現在の状況は屈辱的だとして、SNS上で自分を…

ネオワイズ彗星と高温のシベリア

(2020年7月22日付け「学年だより№55」より①) 本当なら既に夏休みに入っている。相変わらず梅雨空はうっとうしいが、そのおかげもあって真夏の暑さになっていないのは助かる。暑くないから、「本当だったら既に夏休みなのに」と恨み言を言うことも…