訃報

満映の女性編集者

しばらく間が空いてしまった。また本の校正をしていたのである。ついに異例の5校。最善を目指すという編集者の執念に脱帽だ。この執念に私は救われた。この間にどれほど多くの問題点を発見し、訂正を重ねたことか。 今回は索引と注の番号合わせ、地図の修正…

宇宙と人の世・・・海部宣男氏を悼む

一昨日の新聞各紙に海部宣男氏の訃報が出た。どの新聞も、写真入りの比較的大きなものである。元国立天文台長、国際天文学連合会長、日本学士院賞受賞者となれば、そのような扱いにもなるだろう。文化勲章を取れなかったのは、75歳で死んだからであって、…

月面の懐中電灯・・・晝間輝夫氏を悼む

今朝、新聞を開いたら、晝間輝夫氏の訃報が目に入った。どうも最近は訃報に触れることが多い。いや、触れたくなるような訃報が多い。 先日のエル・システマと同じく、知る人ぞ知る超有名企業「浜松ホトニクス」の創業者である。朝日新聞は1段全てに近い大き…

ホセ・アントニオ・アブレウとエル・システマ

今朝、ウグイスが鳴いた。「ホーホケキョ」には至らず、「ケキョ」と一声鳴いただけだったのだが、間違いない、ウグイスの声だ。息子も、「あ、パパ、ウグイス鳴いたよ!!!!」と大騒ぎ。いいなぁ、この年中行事。 そう言えば、昨晩、我が家の駐車場にカエ…

何もかも間違い

今日は3月11日。東日本大震災から7年目である。我が家からの景色は更に変わった。南浜復興祈念公園の工事が急ピッチで進んでいる。すこし東に歩くと、北上川では堤防工事だ。マリーナとなる予定の場所付近では、何のためなのか、日曜日以外は連日くい打…

理想の研究書・・・礒山雅氏を惜しむ

先週土曜日の毎日新聞を裏から開いたら、礒山雅(いそやまただし)氏の訃報に目が止まった。71歳。え?まだ若いのに・・・。 国立音楽大学招聘教授でバッハ研究の権威だ。私がこの人のことを知ったのがいつかは記憶にないが、1985年に『バッハ=魂のエ…

寒中、長老の死を惜しむ

今日も石巻は−7.8℃まで下がった。日中は+0.8℃まで上がり、4日連続の真冬日ということにはならなかったようだが、石巻らしくなく寒い。寒いおかげで、先週の火曜日に積もった雪もなかなか溶けず、いまだに雪景色が広がっている。 我が家は、室内が約…

佐伯敏子さん逝く

今朝の朝日新聞で、今月3日に佐伯敏子さんが亡くなったことを知った。97歳。 広島の被爆者で、平和公園にある原爆供養塔の「墓守」を長く続けていた。この方については、かつて一文を書いたことがある(→こちら)。結局、その後お会いすることは出来なか…

中国民間交流の「生き字引」逝く

昨日、小澤玲子さんが亡くなったというメールを、ご家族の方からいただいた。おそらく87歳。4年前に初めてこの方にお会いしたときの話を、一度書いたことがある(→こちら)。「日中民間交流の「生き字引」」というのがその時のタイトルである。 私が自分…

宮城県最後の映画館主

そうそう、函館から戻って、その間にたまった新聞の整理をしていたら、8月20日付の「石巻かほく」で、清野太兵衛さんの大きな訃報を見付けた。いくら超ローカル紙とはいっても、1面の半分近い大きさの訃報というのは異例であろう。 清野さんとは、あのア…

ダンプ園長逝く

続ける予定だった函館の話は中断。 昨日、帰宅したら「ダンプ園長が死んだよ」と言われて驚いた。ダンプ園長とは、かつてユニークな教育実践で全国に名を馳せた石巻の未認可保育園「わらしこ保育園」の園長・高田敏幸氏である。亡くなったのは20日夕刻。享…

中村紘子

先月末、新聞で、26日に中村紘子が死んだことを知った。まだ72歳だったという。千代の富士に匹敵する驚きを持って訃報を読んだ。 戦後日本の第1世代として幼いうちから頭角を現した天才少女、美貌のピアニスト、教育者やエッセイストとしても一流・・・…

ニコラウス・アーノンクール(2)

音楽観の違いから、カラヤンによる大抜擢を断ったアーノンクールであるが、カラヤンに反感を持っていたということは全然ない。むしろ、彼もカラヤンを高く評価していた。次は、メルトルが引くアーノンクールの言葉。「私は彼にものすごく感嘆しました。(中…

ニコラウス・アーノンクール(1)

3月5日にニクラウス・アーノンクールが死んだ。オーストリア出身のチェリスト、指揮者、いやそれ以上に音楽学者。音楽学者としては非常に面白いが、音楽家として特別好きな人ではない。それでもせっかくの機会だからと探してみれば、出てくる出てくる。我…

単純を極める奥深さ

(学校で書いた駄文に手を加えたもの) 今月15日の毎日新聞で、辻谷政久という人の訃報を目にした。記事には、「家族経営の工場で40年以上にわたって陸上競技で使う砲丸を製作。1996年のアトランタオリンピックから3大会連続で、男子砲丸投げの全メ…

荒れ野の70年

統一ドイツの初代大統領、リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカーの訃報が新聞各紙に載ったのは、今月1日のことだった。94歳。 おそらくは他の多くの人と同じように、私も1985年5月8日、ドイツの敗戦40周年を記念した連邦議会における講演で、この…

私はやっぱり「海峡」だな

早いもので1ヶ月近くも前の話だが、高倉健が死んだ。2〜3日前に、菅原文太が死んで、「二大巨頭逝く」などという見出しもいくつか見たような気はするが、「二大巨頭」ということはない。違う個性を同列に論じられない、などという理屈っぽい話ではなく、…

フランス・ブリュッヘン

8月15日だったかの新聞で、フランス・ブリュッヘンが死んだことを知った。オランダ生まれのブロック・フレーテ(リコーダー)奏者・指揮者である。享年79歳。 なぜ、半月近くも前の訃報を今頃取り上げるかと言えば、その後、例によって、我が家にあるブ…

吉野弘

アバドの死が伝えられた21日は、吉野弘の訃報も流れた。ただし、こちらは亡くなったのが6日も前の15日で、87歳の誕生日の前日だった。実は、えっ?吉野弘ってまだ生きていたんだ、という驚きが大きかった。 山形出身である友人のお父さんが吉野弘(山…

クラウディオ・アバド

クラウディオ・アバドが亡くなった。80歳。1月21日の新聞で知ったが、夜のNHK7時のニュースでも報道された。日本のオーケストラの音楽監督をしたことがあるわけでもない(指揮台に立ったことさえない?)指揮者の訃報が、一般向けの夜のニュースで…

ネルソン・マンデラとアパルトヘイト

(12月13日付け学級通信より) 12月5日にネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領が死んだ(95歳)。10日に行われた追悼式典には、世界各国の要人を始め、数万人の人が集まったという。 南アフリカでは、かつて「アパルトヘイト」という悪名高き人…

川端純四郎『バッハ万華鏡』

今年の5月23日、仙台在住の宗教学者・川端純四郎氏が亡くなった。私は新聞でそれを知ったのだが、この1週間ほどで、その遺稿とも言うべき『バッハ万華鏡』(7月25日刊、日本キリスト教団出版局)という本を読んだので、今更ながら少し触れておこうと…

ある先生の思い出

11月も半ばになると、1日おきくらいで「喪中葉書」というのが届くようになる。親が亡くなったというのがほとんどである。大抵の場合、その亡くなった方に私は面識が無いのだが、それでも、いくばくかの感慨は抱くものである。 今日も1通届いた。しかも、…

二刀流の「打撃の神様」

(11月1日付け学級通信より) 今日から11月。古称で「霜月」と言う。もちろん、霜の降りる月という意味だ。この石巻でさえ、まだ決して寒くなったとは言えないけれど、間もなくそういう季節がやってくる。我が家の桜も、葉っぱが少し色づき始めた。 と…

ヨバンナ・ブロズ氏の小さな訃報

今日、『毎日新聞』の国際面に、小さな小さな訃報を見つけた。一般紙の中で載せたのは、多分『毎日』だけだった。ヨバンナ・ブロズ氏のものである。私の知らない名前だったが、括弧書きで「旧ユーゴスラビアの故チトー大統領の妻」とあったので、目に止まっ…

仙台フィル第277回定期と諏訪部百合さんの訃報

昨晩は、仙台フィルの第277回定期演奏会に行った。曲は、ドヴォルザークの「スターバト・マーテル(悲しみの聖母)」である。オーケストラこそ仙台フィルだが、指揮はレオシュ・スワロフスキー、合唱はスロヴァキア・フィルハーモニー合唱団、4人の独唱…

「伝説」や「奇跡」は今後も生まれるか?

昨日の新聞各紙に、元灘校国語教師・橋本武氏の訃報が載った。101歳の大往生である。 私もかつて取り上げたことがある(→こちら )が、氏が退職してから30年以上経ってから、卒業生が著書で話題にし、NHKが番組を作り、そして伊藤氏貴氏が『奇跡の教…

中原中也についての貴重な証言・・・村上護氏の訃報に接して

6月30日の新聞各紙に、文芸評論家・村上護氏の訃報が載った。71歳。たいていは氏の代表作として、デビュー作でもある『放浪の俳人山頭火』(1972年)を挙げるわけだが、私が見た範囲で、『読売新聞』だけが、それと共に、氏が『私の上に降る雪は』…

バッハ『音楽の捧げ物』・・・パイヤールの訃報に接して

5月6日だったかの新聞に、ジャン・フランソワ・パイヤールの訃報が載った。亡くなったのは4月15日だという。パイヤール室内管弦楽団を組織し、バロック音楽の普及に大きな功績を残した、というのが公式の紹介として無難だろう。しかし、その活躍が華や…

新しい考古学・・・小林義武氏の死に際して

昨日の新聞各紙には、音楽分野における重要人物2名の訃報を載せていた。一人は、NHK交響楽団桂冠指揮者のウォルフガング・サバリッシュ(89歳)であり、もう一人は世界的に著名なバッハ研究者の小林義武氏(70歳)である。 サバリッシュは、N響でお…